時は少し戻り、黒木の懲戒解雇が決定されたその日、寮の胡々希の部屋
胡々希の返答を聞き
「うちで働いてくれるんだね、良かった…ありがとう。…
米倉さんのエステ店との業務提携に関しては、まだ口約束の段階で、細かいことは何も決まっちゃいないけど、社員に対する福利厚生の一環として考えてみるよ。いいですよね、米倉さん。」
米倉「さぁ~どうでしょう…うちも商売ですから何か見返りがないと(笑)」
「そういう諸々のことも含めて、後で話を詰めましょう。うちの交渉窓口は目黒にしますのでよろしくお願いします。頼んだぞ目黒。」
目黒の肩を叩き、米倉と胡々希には分からないようにウインクする亮平。
亮平のウインクの意味を悟った目黒は、
目黒「ちょ…ちょっと社長……分かりました、頑張ります。」
米倉「佐久間スポーツジムさんの担当は目黒さんですか。うちは私が担当しますのでよろしくお願いします。」
そう言うと手を目黒に差し出し握手を求める米倉。
目黒はその手を握り返す。握り返すその手には少し力が籠っていた。
雰囲気が明るくなった室内だが、亮平の次の言葉で空気が緊張する。
「後は黒木をどうするかですが……
このまま解放して、ジムへの出入りはできなくしても、近くであの件を言いふらされたりしたら、井ノ上さんはもとより、会社としての佐久間ジムも大迷惑です……どうしたものか。」
考え込む一同。胡々希の顔は緊張に満ちている。
その静寂を破ったのは米倉だった。
米倉「先程話した、黒木が実家にいる親から結婚しろと言われて、逃げ続けてるって話覚えてます?
あの話を使って脅し入れときますか?
井ノ上さんか佐久間ジムに対する悪い噂耳にしたら、その時点で問答無用で実家の親に連絡すると。
彼女まだまだ自由でいたいはずですから、一定の歯止めにはなるかと。
幸いなことに、以前黒木から実家に招待されたときに、黒木の両親と意気投合して、携帯の番号聞いてますし(笑)」
「そうですね、そうしましょうか。じゃあ黒木のところに行くか、目黒。すいませんけど、米倉さんも一緒に来てください。」
その後、亮平から懲戒解雇処分になったと伝えられた黒木。
最初の内は色々と抵抗していたが、実家に連絡するという脅しを受けるに至りおとなしくなり、社員証や入場パスその他会社の備品を亮平に返すと拘束を解かれて、力なくビルから出て行った。その後、黒木の姿を見かける者はいなかった。
黒木の懲戒解雇について、翌日亮平から全社員に対して説明された。
懲戒解雇の理由は会長に説明した通り、社員一人を命の危険に晒したとだけ。
それから数日社員間で色々な憶測が飛び交ったが、それも時間と共に忘れられていった。
新素材でできたウェアと水着が届き、新一号店も完成し少し経過したころ、胡々希と大西君の入社日を迎える。
緊張した面持ちのスーツ姿の二人。
簡単な入社式は滞りなく進み亮平の挨拶で式次第のすべてを終える。
堂本「大西君、井ノ上さん早速だけど、上の階に職員用更衣室があって、それぞれ二人のロッカーを用意してあります。中に職員用のウェアを用意してありますので着替えて、ここに戻ってきてください。先日の器械説明会の時には案内しなかった所も含めて改めて社内を案内します。大西君には私が、井ノ上さんには〇〇さんが、更衣室まで付き添います。」
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