一通り米倉からのヒアリングを終えた亮平と目黒。
「そうですか、貴女も一部黒木から騙されていたわけですね。最終的には井ノ上さんを助けていただいたわけだし、井ノ上さんも先程のように言っていたわけだし、今回の貴女の行った件については不問としましょう。」
そう言ってから何事か考え始める亮平。少しの後、
「目黒、例の件目ぼしい相手は見つかったのかい?まだ見つかっていないようだったら、米倉さんではどうかな。」
目黒「業務提携って話ですよね。なかなかいい店が見つからなくて…米倉さんがOKならいいとおもいますが。」
米倉「あの何の話でしょう??」
「急にごめんなさい。訳が分からないですよね。スポーツクラブというのはある程度まで会員が増えてしまうと頭打ちになってしまって、その後の伸びは微々たるものなんですよ。でも器械を入れ替えるためには会員数を増やさなければならない。
そこでスポーツクラブと親和性がそこそこある業種のお店と業務提携できないかと考えたんですよ。業務提携と言っても最初の内は、お互いの広告を置き合うくらいのものかと」
米倉「なるほど。面白いかもですね。」
「そう思って貰えますか?」
そう亮平が米倉に返した時、電話で話していた目黒が、
目黒「社長、失礼します。菊池さんが下に見えたそうです。堂本部長と共に社長室で待ってもらうように伝えました。」
「そう、わかった。俺たちも行こうか……最終的な人事権は俺が持ってるから、会長には黒木を懲戒解雇にするとだけ伝えて、その理由は昨日のサウナの件と職員への重大な人権侵害行為にしておこう。サウナの件だけで納得はすると思うが、納得しないときのため米倉さん、ここか井ノ上さんの部屋で少し待ってていただけますか。業務提携の話はまた改めてということで。欠席裁判になってしまうが黒木を場に連れて行くと、寮の件口走りそうだし…そうすると秘密が俺達三人以外にももれてしまうからな」
米倉「分かりました。ここではあれですから、井ノ上さんが入れてくれれば井ノ上さんの部屋で待たせて貰います。行ってらっしゃいませ。」
亮平と目黒が社長室に入ると、堂本と菊池が待っていて、会長も時を待たず社長室に入って来る。
会長「社長何だ。緊急で報告したいこととは?ジムの経営はもうお前に全部任せてるはずだが。」
亮平「社員を一人懲戒解雇処分にします。対象は黒木インストラクター長です。」
会長「黒木君をか??何故理由は?」
亮平「社員一人を命の危険に晒しました。証人は堂本総務部長とジム会員の菊池さんです。他にも当該社員に対して重大な人権侵害行為を行いました。」
極めて事務的に話した亮平は堂本と菊池にサウナでのことを話すように促す。
堂本と菊池の話をたまに質問を挟みながら聞いていた会長は聞き終わり、
会長「そうか…黒木君は恩ある先輩から良しなにと頼まれていたのだが、その先輩ももう物故されていることだし……分かった。それだけか?」
亮平「はい。」
会長「そうかじゃあ後は宜しく頼んだぞ。私は今日はこれで帰宅するから。」
亮平「わかりました、お気をつけて。」
亮平がそう返すと社長室を出て行く会長。
社長室のドアが閉まると菊池が亮平に、
菊池「おい、亮ちゃん。重大な人権侵害行為って、あのおばさん他にも何か井ノ上さんにしでかしたのか?何やったんだよ??」
亮平「いくら、勝ちゃんといえど、こればっかりは言えないな、勘弁してくれ。」
堂本は堂本で、その会話を聞きながら、昨日の胡々希からの電話を思い出し、亮平に報告した方がいいかどうか悩んでいた。
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