駅構内への階段を昇ろうとしかけたとこで、佐久間社長!と呼ぶ声が聞こえ、後ろを振り向くと少し離れた所から小走りに走って来る、井ノ上胡々希の姿。
歩みを止め待っているとすぐに追いつき謝罪してくる胡々希。
「井ノ上さん、さっきのことなら気にしないでいいのに…それより彼の事置いてきちゃって大丈夫なの?これから飲みに行くんでしょ(若いんだからその後はお決まりのコースだよな勿論(笑))。」
胡々希の答えを聞きながら、下げていたビジネスバックから一枚のハンドタオルを取り出し胡々希に渡す亮平。
「そうか…誘い断って悪かったかな?でも先ずはこれで汗拭きなさい。」
胡々希が一息つくのを待ってから、
「コンビニ前でぶつかったばかりに、折角のデートの予定が無くなっちゃって悪かったね。……そうだ、一時間くらいならそんな遅くならないだろうから、お詫びってわけじゃじゃないけど、お茶でも飲みに行く?折角今度うちの会社に入ってくれるんだし、聞きたいことがあれば答えられる範囲で答えるよ。あっ、えこひいきだとか言われちゃうから、入社しても社内の他の皆には内緒にね。」
電話を終えて部屋を出た黒木はそこに堂本がいるのに気が付く。
「あら、堂本課長。いいところで会いましたわ。新入社員の〇〇日の研修の件なんですけど、より体にフィット出来て動きやすい方がいいかと思いまして、誠に勝手ながら、ウェア会社に採寸に来ていただけるよう、今連絡しました。
事後報告になってしまって申し訳ありません。
黒木心の声:これでウェア会社との会話全部聞かれていたとしても胡麻化せるわよね。角度によって透ける新素材については、サンプル下さいとだけしか言ってないし。」
「わかりました。ご連絡ありがとうございます。じゃあ、採寸の時間も考慮して、応接室も押さえておきましょうか。二か所でやった方が早いですからね。」
「そうですね。応接室の追加予約は、グループウェアで私の方でしておきます。
黒木心の声:これで予約名称を適当に書いておけば、全裸採寸中に社長を呼び出すことも可能っと(笑)」
「そうですか、それじゃ宜しくお願いしますね。
堂本心の声:黒木さんが自分でやっとくって言うなんて珍しいな…いつもはトレーニングの事以外は、ほんの些細なことでも頼んでくるのに。何か企んでる?まさかそんなことは……考えすぎ考えすぎ(笑)」
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