「まるで小さな羽根でも生えているみたいに、軽く打球を捌いているし、際どいコースへの対応もしなやか、特に下半身が柔らかく使えているのかな…低めの球への反応が凄くいいね。
これで周りのメンバーより劣っている、というのなら、栞ちゃんのチームは相当強いんだろうね…。」
栞本来の実力は申し分ない。
思った以上に期待とメンタル、自身のモチベーションがプレイに直結するタイプだと判断できた。
昨日はシンプルな筋力トレーニングのみで終わったこともあって、実践的な動きを見るのは初めて。
しかし、栞の出来を褒めつつもあえて、下半身に関わるプレイに絞って賞賛することで、無意識に昨日の筋トレ、或いはその後のマッサージの効果だと思わせる意図を持たせた。
(表情も戻ってきたみたいだな。
体調が悪い時に優しくされて勘違いしてしまう、なんてケースと同様。
昨日のことを執拗にケアすることで信頼関係を築くのも良かったけど…。
それじゃ栞にとっての前向きな躾にならない。
もっと前のめりに、もっとポジティブに、積極的に恥ずかしい毎日を当たり前にしなきゃ意味が無いからね…。くくっ…。)
ポイントを限定しながらも、具体的な内容で褒めながら、その日の実践練習は落ち着きを見せる。
真夏の空は雲ひとつなく、じりじりと肌を焼くような日差しは、大量の汗を吹き出させる。
「お疲れ様。
実戦形式はこれくらいにして、頑張ってくれた身体のケアをしていこう。
ほら、喉乾いたろ。」
ぽいっと、ドリンクを栞に軽く放り投げる。
ある種の劇薬。
ここでトラウマ的に昨日のことを思い出してしまえば、逆戻り。
しかし、それでもなお憧れは見捨てない、受け入れてくれる、指導してくれる、そう少し先のことまで考えを進めることが出来れば…。
リスクは少なくない。
しかし、この熱中の場で水分を取らないのは文字通りの自殺行為。
どこかで踏み込まなければいけない。
次の楽しみに進むためにも…。
急かさない、促さない。
それは言葉でも、視線でも同じ。
あえて渡した直後に栞に背を向ける。
気にしている素振りなど全く感じさせない。
「いい汗を流したら、身体にもいいものをあげないといけない。
頑張りすぎてもいい、溢れてしまってもいい。
俺しかここにはいない。
だから心配しなくていい。
俺にだけは全てを晒してくれていいんだ…、栞ちゃん。
準備が出来たらケアを始めるよ。
今日は全身使ったからね。
しっかり時間を使っていこう。」
背を向けたまま、そっと呟く。
それ以上はもう言わない。
ゆっくりと、しかし確実に進む躾。
少女を辱め、蝕み、壊していく躾。
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