「おはよう。来てくれてんだね。
来る前に連絡してねって言ったのに…。」
今日も今日とてグラウンドで自主練に精を伸ばしていた。
少女に対する邪な感情とともにあるのは、本来の自主練の必要性。
野球界の中核を担っていることは言うまでもないこと。
少女で遊ぶのは、気分転換、或いは片手間程度にしておかなければ行けないのは事実。
結局送ったLINEに既読は付くが返事はなく、昨日の出来事は男が想像していた以上にショックだったのかもしれないと僅かながら諦める気持ちも浮かび上がると共に、本来の目的に集中するべきなのかと少し肩を落としていた時、何気なく向けた視線の先に見覚えのある少女を見つければ、思わず足早になり駆け寄ってしまった。
「でも、また来てくれてよかった。もう俺の指導なんて、って思われたらどうしようかって、ちょっと心配だったんだよね…。」
(せっかくの獲物を取り逃したとなれば、ショックなんて言葉じゃ収まらない。
ほんと、よく来てくれたよ…。)
「今日は部活?はなかったのかい?
こんなに早くから来てくれるとは思ってなかったから少し驚いたよ。
でも、ちゃんと約束通りユニフォームは荷物の中にしまって私服で来てくれてるね。
約束を守ってくれてありがとう。
早速始めていくかい?
それとも少し話そうか?」
思い出したくないかもしれない昨日のことには触れず、また会えたことを嬉しそうな顔で話す男。
失敗を笑っていじって来るような同級生とは当然違う大人の対応は、少しずつ、しかし確実に栞の心を囚え、羞恥快楽の沼へと引きずり込んでいく。
すぐに練習、と言い出さないのは栞の心の整理がついているかの確認。
改めて委ねていい、縋っていい。
従えばいいと思えなければ躾に意味など無いのだ。
※元投稿はこちら >>