漏らしたおしっこ以上に溢れてくるのはその涙。
滲む汗とは明らかに違う大粒の涙を目尻に作り、堪えきれなくなっては頬を伝い、流れ落ちる。
明らかに羞恥よりも罪悪感や喪失感が大きいように見える。
憧れを自らの失態で汚してしまった罪悪感か、夢のような機会を自らの失態で失ってしまうかもしれない絶望感か、あるいはその両方か。
落ち着かせるように何度か声を掛けてはいるものの、その声はどうやらほとんど届いていないようだった。
(可哀想に思えてくるくらい純粋だな…、恥ずかしいなんて思っている余裕なんてまるでないくらい、俺の指導が受けられないことの方がショックと見える…。
いいぞ…、既に俺の指導に対する違和感や疑問なんてものは全くない…。
こっちは恰好の獲物を手放す気なんて全くないってのに…。
恩着せがましく、続けてあげるよっぽく接すれば、抵抗どころか心から喜んでくれそうなもんじゃないか。
とはいえ、さすがにこんな状況で練習続行する気にもならないか。
帰りたい気持ちになるのもわかる。
今後に向けた次の段階に進むか…。)
「…ちゃん…、栞ちゃん?
大丈夫…?」
心ここに在らずと言ったほどに取り乱す栞に、呼びかける。
今度はちゃんと反応があるまで、返事があるまで。
「…先、連絡先教えてくれるかい…?
ラインでもインスタでも、なんでも構わないんだけど。もし天気が悪かったり、都合が悪くなったら連絡しないと困るだろ?
急に予定が入る可能性だってあるだろうしね…。
それに、気軽に連絡出来れば家にいる時もアドバイス出来ることもあるかもしれないしね。」
ぐっしょり濡れた身体を濡れタオルでできる限り拭いながら、男は声をかける。
少女の立場で考えれば、絶望の中に差し込む光。
見放さず、それどころか個人的にやり取りする手段まで手にすることが出来るのだから。
「もちろん着替えが終わってからで、いいからね。
待ってるから、ゆっくり着替えなよ?」
ある程度拭き終えると、一度手を離して着替えを促すが、もう着替えるからと顔を伏せたり、意識して背を向けるような素振りを見せることはない。
(漏らす瞬間まで見られてしまったら、今更着替えなんてどうって事ないだろう…?
そうやって、見られながらの着替えも、普通、になって行くんだよ…くくっ。)
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