「向上心が高いだけじゃなくて、頭も良いんだな。栞ちゃんは。
今の時代は、ただ運動能力が高いだけじゃダメなんだ。
相手の考えていることを察する力、洞察力も意識しなきゃいけない。
そして何より、ファンがいるから自分たちはプレイできるってことを、忘れちゃいけない。」
オブラートに包みながらの表現から、難なく「見られる事も一つの練習」へと昇華させて理解する思考回路。
言いたいことを汲み取る力は十二分、しかし、憧れを目の前にすれば冷静な判断はやはり鈍っていくのかもしれない。
「一日当たりの練習量も知れているからね。
やはり、数日に分けて効率のいい練習という形はとっていきたいと思う。
今日のような週末ならともかく、平日は学校もあるだろう。
友達や両親を上手く誤魔化せるなら、学校終わりも毎日くればいいけど…なかなかそう言うわけにもいかないだろう…?」
あくまで言葉尻は少女の状況も察して言葉を掛けられる大人の対応。
しかし、姑息にも「望めば憧れとの時間を増やせる。」ことを匂わせる。
それはつまり両親か、友人か、あるいは教師か、コーチか…。
いずれかを欺き、秘密裏にここへと赴く選択をすると言う事。
男の狙いはまず、少女自身にも後ろめたさを抱かせることにあった。
いくら、練習だから、これから役に立つからと言っても、そこに違和感を感じさせてしまえば話はそこで終わる。
そこに踏み込む前、憧れに対して盲目な少女に先立って後ろめたい既成事実を作ってしまうのだ。
友達に黙って…、母に嘘を付いて…。
そんな状況になっていけばもはや縋るモノが限定されていく。
そうなってしまえば、少しの違和感など大した問題にはならない。
踏み込んでいくのはそこから…、今は少しずつ憧れにときめく少女を手名付けるためにジャブを打ち続けるだけ。
「良いかい…?
バッティングにおいても、走ることにおいても重要なのはお尻だ。
身体の中で最も分厚くて大きな筋肉…、お尻、そして太腿…。
ここの使い方でボールはもっと飛ぶようになるし、脚はもっと早くなる。
でも、やっぱりお尻が大きい、太ももが太い、というのは女の子にとっては避けたいことではあると思う。
だから無理は言わないけどね…。
それでも、恥ずかしくても、笑われるかもしれなくても、上手くなりたい…そんな強い気持ちがあるなら…。
俺も真剣に、指導してあげたいって思っているんだ。」
相も変わらず説明はもっともらしい、その言葉に合わせて男の大きな手は少女の小ぶりな尻肉を少し撫でるようにして触れ、固さを確かめるように手に力を加えると揉むような動きへと変わっていく。
「ハリ…は、瞬発的な力を生む。
柔らかさは、柔軟な動きを作ってくれる。
同時に作っていくのは難しいね…、今の栞ちゃんは…どっちが欲しいとあるかい…?」
やるかやらないかではなく、やることは前提。
方向性の選択。
どっちの選択をしても、手法を決めるのは男。
結局やることは変わらないが、少女も自ら選んで取り組んでいるという自責が生まれることで、引き下がれなくなることを狙って。
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