「あっ…ほ、はいっ…!よ、よろしくお願いします…!」
無造作に差し出された手を反射的に握り返した。
すごく大きくて力強い…まだ真夏とも思える暑さのためかじっとりと汗ばんでいた。
もしこれが憧れの松井選手でなければ気持ち悪いと思ったかもしれない…
(わっ!大きな手…この手があんなプレイを…)
夢や妄想などではない…あの松井選手から指導を受けられのだと改めて実感した。
「は、はいっ…!佐倉栞てす。中学2年生です。ポジションは内野…中学になってからは主にセカンドです。打順は1番…あ、足には自信ぎあって…憧れの選手は、勿論松井翔平選手ですっ!身体はさほど大きくないのにパワフルなバッティングが大好きで…巧みなバットコントロールも…それと守備も…あのグラフさばきなんか…あっ…す、すいません…つ、つい…」
気づけば松井選手が苦笑いを浮かべるほど熱弁をふるっており…それに気づき顔を真っ赤にして縮こまる。
(や、やっちゃったぁ…松井選手の事になるとつい…)
同じチームメートでさえ栞の松井選手話には耳タコと言われるくらい…顔を恐る恐る上げて松井選手を見ると栞が好きなファンに見せるあの笑顔があった。
「は、はいっ!よろしくお願いします!えっと…」
ユニホームに着替えストレッチから始めると言う松井選手に返事をした栞は辺りを見渡した。
(更衣室…なんて…あるわけないか…)
ちゃんと整備されたグラウンドでない…施設が整っているはずもなく、実際見渡してみても更衣室らしきモノはない。
栞も中学2年生…異性の前で堂々と着替えをするこには抵抗がある…けれど「恥ずかしいから…」などという理由でこのチャンスを逃すわけにはいかない。更にいえば、松井選手ほどの立派な人が中学生ごときの着替えに興味を示すはざがあるわけがないのだから…そんな事を考えることすら松井選手に失礼に思えた。
「じゃ、じゃあ…」
栞はベンチのある方へと移動すると、Tシャツに手をかけた。流石に松井選手には背を向けて…
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