義父の元へコーヒーを差し出した瞬間、私はその香りに気づいてしまった。
普段は気になるほどでもない香り。
しかし今日の早朝にはむせ返るようなその香りを感じていた。
『この香り…私の…。』
シャワーを浴びる前、脱衣所で下着を脱いだ瞬間にムワッと広がった匂い…。
それと同じ香りが今、目の前の義父から漂ってきていた。
『なんで…?なんでおとうさんからあの匂いが…?』
気が動転した。あるはずのない状況が私の目の前…いや…私を取り囲むようにもたらされている。
疑念が湧き上がる中、プールを早く早くとせがむ娘に背中を押されたように、朝食の後片付けの為にキッチンに向かう。
洗い物をしながらも背後から向けられる義父からの視線を意識してしまう。
不意に義父から掛けられた言葉。その声の元はすぐ背後に迫っているように感じた。
背後から浴びせられる視線。まるで掌で撫で回されているんじゃないかと感じるほどに伝わる。
洗い物をしながらも無意識に身体が小刻みに跳ね上がる。
「洗濯機を回したら準備しますね…。」
そんな何気ない言葉すら、声は震えどこか艶のある声色になってしまった…。
義父は庭にプールの準備をしに向かう。
その後姿を見ながら私は脱衣所に向かう。
扉を開けた瞬間、あの香りが鼻腔を満たす。
『えっ…こんなに…?』
中を覗くと私の下着が一番上に乗せられているのを見ると…やはりイタズラされていた事を悟る…。
『やっぱり…。』
いたずらされたであろう下着を手に取り、痕跡を探ろうとしてみても、どんな風にイタズラされたのかを想像するだけで身体の芯が熱く潤んでくるような感覚に見舞われる…。
「あっ…えっ…おっ…おとうさん…。えっ…はい…タオル…。はい…タオルですね…?」
不意に声をかけられて動揺は隠しきれない。手にした下着を丸めて手の中に押し込んでも端は拳の外にはみ出している…。
「あっ…そっ…そうですね…洗濯機を回したら行きますね…。」
視線は泳ぎ笑顔は引きつっている…。
そして娘に水着を着せると庭へと送り出し、洗濯物を入れた籠を抱えて庭に出る。
「よかったね真愛…おじいちゃんとプール楽しそうね…。」
プールの中ではしゃぐ娘と義父に背中を向けて洗濯物を干し始めると…。
「きゃっ…!冷たいっ…!こぉら…!」
背中に水を浴びせられて思わず身をすくめて振り返る。
義父と共にキャッキャと喜んでいる娘。
すると今度は前を向いた私にホースの口を向けると容赦なく水を浴びせかけ…。
「もぉ…真愛…。あんまりイタズラしないの…!」
怒ったように怖い顔をして娘を見つめる私の視界に、妖しく光る瞳を輝かせながら視線を投げかける義父。
ふと、視線を下げた私の目に飛び込んできたのは薄手の白いワンピースが水を含み、身体に張り付き下着を露わに透けさせている姿だった。
肌も透けてピッタリと張りつくワンピース。
黒地に赤の刺繍が入った下着がブラもパンティも丸見えになっていた…。
慌てて張りついたワンピースを引っ張って身体から引き離しても、手を離すと再び身体に張りつき、下着姿と同じ姿を義父の目の前に晒してしまう…。
『あぁ…いやっ…こんな姿…恥ずかしい…。』
そう思いながらも手で隠すでもなく、イヤらしく笑みを浮かべる義父から躊躇うことのない視線を浴び続ける…。
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