クラス替えの日から楓さんを見る度に妙にソワソワしてしまう
あれが僕の知ってる幼馴染だなんて…見なきゃイイのは分かっているがどうしても視界の隅に入り込む、いや無意識に彼女の姿を追っていた
それはクラス内の男子も同じだったみたい
楓さんが登校してくると男子の視線が一斉に集中する、それに気付いた彼女のひと睨みで途端に目を逸らす、毎朝のお決まりの光景となっていた
久しぶりに一緒のクラスになれたんだし声を掛けたい気持ちはやまやまなんだけど、どうしても子供の頃の苦手意識が先に出てしまう
結局、今日も彼女に声を掛ける事も出来ず悶々とした気持ちを抱えながら放課後は美術室へと向かった
身体を動かすことは嫌いじゃないけど競う合うのはどうにも苦手で、それに独りで黙々と作業するのが好きな僕は部員が誰も居ない美術部に在籍していた
学校という環境に居ながら自分専用の部屋を得たような感覚に少し優越感を覚えることもできた
空気の入れ替えでもしようと窓を開けると外からは運動部の練習する様子が伝わってくる
しばらく耳を傾けていた僕だったが、なぜだか(そういえば楓ちゃんって運動部にでも在籍してるのかな?)そんな疑問が思い浮かんできた
運動神経は良さそうだしなぁ…ボーっと考えてたつもりだったが頭の中は楓さんの事でいっぱいで、いつの間にかスケッチブックを開き鉛筆を走らせていた
白い用紙のうえに黒い濃淡が楓さんの姿を写し出してゆく
しなやかな身体に曲線美、凛とした美しさを携えた表情…クラス替えの時から目で追っていた楓さんの姿は僕の記憶に鮮明に焼き付いていた
時間も忘れる程、夢中になって書き終えるとスケッチブックに浮かび上がった楓さんを見て「ずるいよな…」そんな言葉が口から漏れていた
女性らしさの欠片も無く男っぽく成長しただろうと思ったら心奪われる程の美少女になってたなんて、いったいどんな漫画やドラマだよ
男勝りで自分のやりたい事ばかり押し付けて、そのくせあんな…縛られてあんな顔してたくせに
縛られて…
しば…
…
気が付くとスケッチブックは新しいページへと移り、そこには身体中を縄が這いまわっている楓さんの姿が描かれていた
無意識に描かれた姿は願望を写し出しているみたいで、幼馴染をそんな眼で見ていた自分に思わず嫌悪感を覚えてしまった
慌てて破り捨てようとしたのだか、スケッチブック内の楓さんと子供の頃の記憶が重なり合った僕にはなんだか破ることが出来なかった
ひょっとして今でも縛られたいとか思っているのかな?都合の良い解釈に自分の中で彼女に対する嗜虐心がくすぐられてゆく…取りあえず残しておくか
アート…そう、アートだよ!!誰に見せる訳でも無い、彼女をモデルに画を描いただけさ
そう言い聞かせ僕はスケッチブックを閉じて帰宅の途に就いた
それからはネットでSMの画像や動画を読み漁り、楓さんの姿と重ね合わせてスケッチブックに描きとめる日々が続いた
―そんなある日の午後―
いつもの様に教室で楓さんをチラ見しているとじっとこっちを見つめてきている
束縛画のモデルにしていた事など知られている訳もないのだが、それもあってか罪悪感に苛まれて今日は勢いよく顔を逸らしてしまう
それが気に入らなかったのか僕の前まで来た楓さんが
「圭介さぁ、、、私のこと忘れた?」と上目づかいで問いかけてきた
突然間近で声をかけられ
「い、いゃ、、、そんな事ないよ…ひ、久しぶり」思わずキョドリながら返事を返す
見つめられると自分の邪まな心を見透かされている様でなんだか落ち着かない
「ふん、じゃ放課後美術部案内して、約束ね」
それだけ言い終えると僕の前から去ってしまった
「…へ?放課後?……放課後!!?」
いま部室の中は楓さんの画が散乱していてとても入れれたモンじゃない、慌てて断ろうとしたのだがHRが始まってしまってどうにもならない
せめて散らかっている画だけでも片付けなければ…
HR後、楓さんを撒いて部室に向ったつもりだったのだが鍵を開けた瞬間、うしろから現れた楓さんは僕の制止も聞かずに部室へと押し入ってしまった
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