「…畏まりました。」
どこか葛藤を含みながらの了承を受け取った柿原は、一呼吸おいて畏まる。
貴方の心情を何となく感じ取ったかの様に…
「ここでは何ですので、治療をさせていただく個室へご案内させていただきます。
どうぞ、私の後に続いてお歩きください…」
人が行き来する待ち合い場。
流石に治療内容の説明はし辛いというもの。
貴方の返事を聞いた柿原はそっと立ち上がり、貴方をエスコートする様に歩き出す。
タッ… タッ… タッ…
待ち合い廊下を左へ曲がると、長い一本の新たな廊下に入る。
徐々に人気はなくなり、声も殆どしなくなっていく…
治療部屋… 個室…
一般病棟とは違い、どこか隔離された場所でもあるのだろうか?…
今や柿原のシューズが床に擦れる音だけが聞こえている。
「こちらになります…どうぞ…」
カ…チャ…
50メートル程歩いただろうか…
柿原は振り返ると右手にあるドアに手を向ける。
診療科名や担当医の名札など、治療に関する名目は一切掲げられていない。
ゆっくりとドアノブを回し、手で貴方を中へ招く柿原。
~~♪~~~~♪~~
ホワイトルーム…
やや寂れた様な暗い病棟とは一線を画す、美しい内観。
BGM?…
室内には何故か音響が施されている。
フルートやピアノといった楽器がゆったりとしたメロディーの上で鳴っている…
…ヒーリングミュージック…
その類だろう。
優し気で美しくも、どこか悲し気なメロディー…
妻の不貞という夫にとっては多大な傷を負う出来事。そんな貴方に寄り添おうとでもいうかの様な音達…
…カチャ…ン…
後ろで音が鳴ると、柿原はゆっくりとロックを掛けた…
「どうぞ…あちらのソファーへお座りください…」
柿原が手を向けた先には、内観とは真逆の真っ黒なソファーが佇む。
その前には一台のスタンドチェアーがあり、その横にはテーブルが置いてあった。
テーブル上にはボックスティッシュ、ウエットティッシュといった治療に関すると思われるものがいくつか並んでいる…
【寝取りに関して。
前者です。
知っていく…というのは、治療を重ねる内に会話なども増えていき、業務外の話などもする様になる。
その中で柿原のプライベートがいくらかわかっていく…というものです。】
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