「良くご覧いただいているようで何よりです、説明の手間が省けますね…。」
顔の前で手を組み、微笑みを壁ているであろう口元は手元で少し隠れている。
視線の先には志保の顔…ではなく、首から下。
ある一線が引かれた通路から男と志保のいる側のテーブルは全てガラスでできており、本来はテーブルで隠れる胸元から下、腹部…下半身に至るまでが、透けて見えるような構造になっていた。
「あのライン…から向こうは普通のカフェになっています。
そしてラインよりもこちら側は特殊な予約を入れなければ、利用できないようになっています。
とまぁ…このあたりは私のサイトをご覧いただいている貴女ならご存じ…ですよね?」
勘ぐっているわけではないが、知っている前提かのように話を進めることで、男にとっても都合の良い流れを組みやすい。
よく使う手だ。
緊張と少しの興奮、自ら調教の希望を口にした女たちは基本的に首を横に振ることはない。
ともすれば、常識、価値観、理性、そんなものは一切意味をなさず、男の言葉こそが全てへと変化していく。
「残念ながら、今日はこちら側にほかに客はいませんが…。
いつもはもっと賑わっているんですよ…。
ナニがあっても…、黙認されるスペース。
トラブルは起こりえません。
なぜなら、ここを予約する為の客は全て、店に個人情報を握られているからです。
問題になるような行為を起こせば、即素性が全て警察に渡る。
安全でもあり…危険でもある、そう言う場所…。
後ろにある通路が見えますか…?
スタッフオンリーの文字が見えますが…、あの奥は提携しているホテルへとつながっています。
状況に応じて、もちろん、通常通り会計を済ませ店外に出ることもできますが…。
逆に、状況に応じて…あちらの通路を通って移動することもできる…そう言う事です。」
薄く笑みを浮かべた男。
挨拶を交わした時のような柔らかさが徐々に薄れていくのを感じる。
カフェのテーブルにしては、台のサイズが小さく、二人の距離が少し近く感じる。
浅く座れば、膝と膝が当たりそうな距離感。
透き通った透明のガラステーブルは、その下で何が起こっているのかも全て見える。
男の膝が少しずつ志保の方へと近づき、そっとその膝を開かせるように内側へと入ってくる。
「これではよく見えませんね…。」
小さく男は呟いた。
膝は男の悪戯により開かされようとしているが、志保が身に着けているのは丈の長いスカート。
まるで試すかのように男は最低限の言葉を用いて、志保に語り掛ける。
【承知しました。
足りない部分を互いに補いつつも、互いの行動を指定してしまうような感じにならないよう努めていきますね。
いわゆる確定ロルは、個人的にやりづらいもので気を付けるようにしています。】
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