「そ、そうだね…。
少し大袈裟に考えていたかもしれないね…。
本当に良かったよ。
勇気をだして話して…。
違うな、勇気をだして話した相手が有砂ちゃんで良かったよ…だ。」
大袈裟、などという言葉で片付けていい話ではないのは明白。
そういう意味で、有砂が有砂で、本当に良かった、と男は心底感じていた。
快活で人当たりも良い素直な性格、スタイルもよく、自然に振舞っていても人目を引くほどの容姿を兼ね備えている。
本人さえ、有砂さえ望めば、いくらでも男が寄ってくる、それほどの魅力を放っている。
にも関わらず、特殊な性質が故に男の歪んだ欲求、性癖に本来女が感じるはずの嫌悪感、違和感を感じないのだ。
良かった、有り難い、嬉しい、そう思わないわけがなかった。
「何も思わない…なら、気にする、遠慮する方がおかしな話…、になっちゃいそうだよね。
お互い様、かな?
私から見れば、有砂ちゃんはちょっとした息子みたいなもので。
有砂ちゃんから見れば、私は、男として見てくれる全部さらけ出してもいいおじさんって所かな?」
言葉巧み…、と言うほど、言いくるめている感覚は無い。
ただただ、有砂の感覚に救われているだけ。
しかし、そこまで言ってくれるなら、骨の髄までしゃぶり尽くすだけ。
今まで、いや、今でも女として扱ってしまっていた父親、そして友人に感謝しかない。
より深く理解し、受け入れた事で既に男に入り込んでいれば、こうはならなかった。
否定こそされないまでも、男である自分をさらけ出すに至っていなかったことが、ここに来て、本来の自分に気づけている、表現出来る喜びを感じ、細かな懸念にブラインドを掛けてしまっているかもしれないのだから。
「良いのかい?
そう言って貰えるなら嬉しいな…?」
都合のいい解釈が脳裏を巡る中、更に都合のいい言葉が飛んでくる。
もっと見られるのか…、偶然ではなく、有砂の合意の上で。
あくまで有砂の優しさから来る提案。
それも少し、男だと思っている自分を理解してくれた男への感謝からくるもの。
「有砂ちゃんがいてくれるなら、そうだね…、警察沙汰になることは、無いのかな…。
だ、だったら…、このうちにいる時は、男として生活したらいいよ。
有砂ちゃんさえ良ければ、だけどね。
君が望むなら、うちへのもっと気軽にうちに出入り出来るようにしてあげる。
男としての生活の練習のつもりでもいいさ。
私も常に家にいる訳じゃないから、本当に気兼ねなく、ね。
胡座をかいても、お風呂上がりに直ぐに服を着なくたっていい。
必要なら男物の下着を身につけてもいい。
ブラなんて、しなくていいさ…。
ここにいる時は、私も有砂ちゃんも、本当の自分で居ていい。
そういう場所にする。
どうだい…?
下着を覗いたり、盗撮が許されるなんて…、それに見合うものを私も有砂ちゃんにあげたい。
どうかな…?」
有砂を手篭めにしようと思った訳では無い。
刺激が、平凡な日常にノーリスクな刺激が、色艶やかな刺激が手に入る悦び。
「もし、いいよって思ってくれるなら、そっちの棚の上にスペアの鍵を置いてるんだ。
使うか使わないかは任せる。
受け取ってくれるかい?」
ベッドの上で立ち上がらなければ届かない位置にある棚。
その上できらりと光る、鍵らしきもの。
そんなところで立ち上がれば、床に座ったままの男の目線の先にはスカートの中、その全貌が丸見えに。
当然のように男はスマホを握りしめたまま、少し蒸気した表情を浮かべていて。
【配慮ありがとうございます。
悲しい、シリアス、バッドエンドのみ、になるような物語を望まないと言うだけですので。
悲しいのにいやらしい。
シリアスなのに濡れている。
などという、本来相反する物同士が混ざり合う展開になって行くならそれはまた新しい興奮に繋がりそうですので。
是非お願いしたいなと思っています。】
※元投稿はこちら >>