「なるほど…。
確かに有砂ちゃんの言うとおりだ。
極端に言えば、生まれた時に親や産婦人科医が「勝手に」性別を決めたようなもの…。
君自身がどう考えているかとは別の話だ。」
安易に接触を図ったことを後悔するほどに、少女の考えは筋が通っていた。
妙に納得させられる男。
邪な感覚を持ち、接近したことを申し訳なく思うほどに。
しかし、幸か不幸か、父親と同じくらいの年代であることは彼女にとって警戒を和らぐ要素ではあったようで、時折零れる笑みに一つのハードルを越えたような気持ちになっていた。
「43…同じだ…。
私も先月、43になったところでね…。
そうか、確かに…娘がいれば有砂ちゃんくらいの歳になっていたのかもしれないな…。」
少し寂しそうな表情を浮かべながらそう答える男。
姑息な手で少女に接近したにも関わらず、まるで被害者にでもなったかのような雰囲気を滲ませる。
意図的ではなく、自然に。
少女、に興味を持つという犯罪的な性癖を持ち合わせつつも、被害者面。
質が悪いとはこのことかもしれないが…。
そんな中でも前向きに返事をしてくれる有砂。
「そうかい…?
はは…確かに、娘の遅い帰宅にはお父さんは黙ってなさそうだね…。
もちろん、時間が許す限りでいい。
そうだな…一応、私の家は近所なんだが…。
カフェとか、そう言うところの方がいいかい…?」
希望を滲ませながらも、警戒させないように選択肢を与える。
とはいえ、有砂にとってもあまり人に聞かれたくない話、という認識なら、友人知人と出くわす可能性のある場所は避けたいだろう、そんな勘繰りもあって。
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