指をハンカチで拭かれ
(母さん…)心の中で呟いた。
宏和は、キスのチャンス伺っていた。
きっと強張った顔をしていたのだろう。
恵美子さんも宏和を見詰める。
「どうしたの?ヒロちゃん、顔が怖いよ」
宏和は、はぐらかすようにベンチから立ち上がりお化け屋敷小屋を指差した。
入り口に入ると恐怖心を煽る為、スピーカーから悲鳴の声が流れていた。
恵美子さんは宏和の腕を組む。
入り口のビニール製で出来ている垂れ幕のような物を何回も潜ると寒い位の冷房とドライアイスの煙で演出されていた。
照明で順路を辿る。
恵美子さんの腕を組む手が強くなると腕に当たる胸の感触がよく分かった。
機械仕掛けで飛び出す人形に悲鳴を上げる。
立ち止まる度に恵美子さんを抱き寄せた。
お化け屋敷のアトラクションを抜けると、そこは全面鏡張り。
不思議な世界に先にたどり着いたカップル達は各々写真を撮っている。
「すげぇ!」宏和が声を上げ全体を見渡す。
床を見ると鏡の反射で恵美子さんのスカートの中が見えそうだ。
花柄のロングスカートから黒いストッキング下着が見えてなかったが。
「母さん…気を付けて…」
半身する床の鏡を指差した。
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