いつもより少し長い呼出音の後、気怠そうな声で電話に出た。
浩二さん「ううん、疲れてるところに電話してしまったみたいだね、こちらこそゴメン」
少し元気がなさそうな雰囲気に、交番勤務で安全だとは聞いているが
いざ、事件が起これば呼び出されたりもするだろうし、危険と隣合せになるのは間違いない・・・
それがとても心配だったのだ。
浩二さん「今日はとても忙しかったんだね、身体は大丈夫?」
ちさと
「・・・・」
僕の問いかけに返事は無い・・・電話の向こう側では余韻から覚めた私が
自分の姿に驚いていると知る由も無い・・・。
ちさと(私・・・逝っちゃったんだ・・・なんで?・・・嫌なはずなのに)
「・・・」
浩二さん「ちさとちゃん?」
相変わらず返事は無い私・・・それどころか口ごもってしまい、まるで何かを隠している様な
雰囲気さえ醸し出してしまっていた。
浩二さん(なんだか今日のちさとちゃん変だな?なにか隠し事してる様な・・・
まさか浮気してるとか!?)
沈黙の中で、その様なことを考えてしまったことに思わずハッとしてしまう・・・
少しでも、疑ってしまった自分自身に嫌悪感を覚え、声を掛けずらくなってしまった。
それは、私も同様で宅澤の事を考えると・・・双方とも声を掛けれずに気まずい雰囲気だけが
漂いはじめる・・・
浩二さん(なんかこの雰囲気、なんか良くないよね・・・ちさとちゃんも疲れてるんだし
伝えたい事だけ言って今日は切り上げよう)
「えーっと、あー、本当疲れてるとこゴメンね。実はちさとちゃんに報告があってさ」
別の学校に転勤することになったんだ、どこだと思う?・・・なんと、ちさとちゃんが
通っていた高校に転勤が決まりました!」
今は仕事の都合上、離れ離れになってしまっていたのだけど、これからは大学の頃の様に
一緒に居られる時間が増える・・・それが嬉しくて私に報告をしたかったのだった。
私にとって忌まわしい記憶しか無いとも知らずに・・・。
宅澤の事を考えると、浩二さんと別れた方が良いのだと思う・・・。
だけど、私と近くに居れると喜ぶ浩二さんを悲しませたくも無い。
知らず知らずに、最悪の選択をしてしまっている。
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