佐藤よしふみは玄関を出ると、いつものように隣家の中庭に目を向けた。まだ朝の空気が残る中、隣家の奥さん――明美さんが洗濯物を干している。細い指で布をつまみ、パンパンと音を立ててしわを伸ばすその動作を、彼は無意識に目で追っていた。
(ああ、今日も綺麗だ……。)
彼女の姿を見つめながら、心の中で呟く。その瞬間、罪悪感が胸をよぎるが、それはすぐに薄れていく。見ているだけだ。何も悪いことはしていない。そう自分に言い聞かせる。
ふと目が行く。竿にかけられた布の中には、彼女の下着が混じっている。柔らかな色合いのショーツと、レースのついたブラジャー。彼は知らず知らずのうちに息を止めていた。その視線は洗濯物ではなく、それを干す彼女の細い腕や、わずかに前屈みになる体の曲線に引き寄せられる。
「おはようございます!」
唐突に声をかけた。
(しまった)
声をかけた瞬間、内心で自分を責めたが、彼女が顔を上げて笑みを浮かべると、そんな後悔は一気に消えた。
「これからお仕事ですか?」
彼女の声が耳に心地よく響く。会話の内容は他愛のないものだった。天気のこと、仕事のこと、そして家庭の話。だが、彼にとっては何よりも貴重な時間だった。彼女の口から「お仕事頑張ってくださいね」と言われ、手を振られる。それだけで、心のどこかが満たされていくようだった。
彼女に背を向けて歩き始めたが、どうしてももう一度振り返りたくなった。そして、わずかに振り返る。
明美さんが何かに気づいたように動き出した。タオルを手にして、物干し竿に干された下着を覆うようにかけている。その仕草は、明らかに何かを隠そうとしている動きだった。
(気づいたんだな)
彼女が自分の下着を見られていたことに気づき、恥じらい、急いで隠している。その事実を理解したとき、胸の奥がじわりと熱を持った。
(恥ずかしがってる……。)
そう思うと、彼はたまらない気持ちになった。恥じらう表情、慌てた仕草。それらを思い浮かべるだけで、胸の奥が高鳴る。彼女の恥じらいの原因が自分だと考えると、まるで秘密を共有したような気分になるのだ。
――次は、どんな表情を見せてくれるだろう。
その思いが、足を止めさせた。振り返ろうか、それとも歩き続けようか――そんな些細な葛藤が頭をよぎる。しかし、彼はその場を離れることを選んだ。
(急いでるように見せないと……。)
彼女の視線を意識しながら、自然な歩き方を装う。それでも心の中では、彼女の顔が焼き付いて離れなかった。
彼が最後に小さく振り返ったとき、彼女はまだタオルで下着を隠していた。その姿は、彼の中にさらなる妄想と期待を生み出していった。
(もっと見たい。もっと知りたい……。)
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