[そうだね…。
見ての通りさ…、名前の横にアルファベットや数字の羅列があるだろ…?
IPといってね、厳密には少し違うけどだいたい一人に対して一つ与えられている。
名前を変えても、同じ人が書き込めば同じIPになる。
それがみんなばらばらってことは、住む場所も年齢も、もしかしたら性別も違う人たちが美優に興味を持っている…ってことになるんだよ…。]
心中に感じる、形容しがたい不安。
隣のブースという、近くて遠い夫にその気持ちを伝えるのは、文字で表現するしかない。
それすらも夫の性癖の一つである。
相対していれば、表情や声色、トーンなど察する手段が生まれる為、必ずしも答える必要があるわけではない。
しかし、見えない、聞こえない環境下であれば、感じていることも、不安に思っていることも、今の気持ちも、疑問も…何もかも、全てちゃんと文字にしなければ、返事として戻ってくることはないのだ。
一言一句を文字で示させる…そんな特殊なプレイすら、夫の癖をさらに興奮させる状況医なっている。
とはいえ、全てが未知の世界で唯一助けを求めることができる夫、最愛の人がすぐ近くにいないことが不安なのは言うまでもない。
妻の不安の言葉にはできる限り素早く返答することが、行為を続けさせるには非常に重要…ひとまず男はそう考えていた。
「それじゃ…。
少し優しめのコメントなら…応えやすい…だろ…?」
呟くようにそんな言葉を漏らしながら、男はカフェのIPという便利な手段を使って、他人になりすましメッセージを作っていく。
《指示するにしてもさ…、少しお姉さんのこと教えてよ。
美優ちゃん…ってかわいい名前だよね…。
見た目はどんな感じなの…?今の服装とかさ…、どんなぱんつ…履いてるの…?》
美優にプロフィールを求めるレスを自ら打ち込み、送信した直後
[まだまともな人もいるみたいだね…。
指示ばっかりになるかと思ったけど…、せっかくだし…。自己紹介してみなよ…。
服装と…ぱんつも…ね?美優]
煽り立てる周囲のレスに比べると、少しまともに聞こえてしまうレス。
それがある意味罠。
過激な物の中に、控えめなものが混ざれば「これくらいなら…。」と考えてしまい、普段ではありえない行為にも踏み出してしまう。
ただのきっかけに過ぎないのに…。
【早速のお返事ありがとうございます。
念のため先に確認しておきますが…。
《》掲示板への書き込み
[]夫婦間のメッセージ
「」互いが実際に口にしている言葉
『』美優さんの心情
でよろしいでしょうか…?
『』に関しては、まだ私は使用していませんが、心情として分かりにくい場合はこちらも『』を使用していこうと思います。
ざっくりと希望は記載いただいているので何となく把握できております。
NGをお聞きしても良いでしょうか…?
いろいろ確認したいこともありますが、一気に書きすぎると返事が遅くなるので小出しにしていきますね。】
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