カチャ…。
鍵をかける乾いた音が私の心と身体に潤いを与える矛盾。
夫にも秘密の行為が、壁一枚を隔てたこの空間で始まろうとしている事に心のトキメキが加速していく…。
本当の事を夫にだけは報告すべきだったのかもしれない。
しかし夫の望みは私を露出させるだけ…。
サイトで指示されるままに淫らな姿を他人に見せつけるだけ…。
夫から懇願された言葉からはそれしか感じ取れなかった私にとって、他人と…見知らぬ男と接触することなど望んでいるとは考えられなかった。
私が夫についてしまった嘘…。
それは夫が望む事以上の行為を私が望んでしまったからなのだろうか…。
聞かれたい…覗かれたい…触られたい…。
もっとその先…。
何に興味を惹かれたのか私自身ハッキリとはしていない。それでも夫が望むものと私の望むものの相違が認められてしまえば…私の望みを果たそうとするのであれば…。
『あなたには…気づかれないようにしないと…。』
薄い壁一枚の向こう側に居る夫に申し訳なさを感じるような視線を向けながらも、背後から思いのほか大きめな声で浴びせられる男の言葉に身体がビクンっと反応してしまう…。
慌てて振り返り、唇の前に人差し指を立てて声をひそめるように伝える私の姿は、ワンピースが上下からはだけてシースルーの下着を晒す淫らな姿。
声を立てるなと言うジェスチャーとは裏腹に淫らな姿を正面から男に晒してしまっていた。
コメントを上げればサイトはすぐさま反応を始めるだろう…。
あの人も…佐藤さんも私に何かしらの指示を投げかけてくるだろう…。
そのわずかな時間…この男の人と狭いブースの中で過ごさなくてはならない気まずさ。
私は立っているだけで襲ってくる素振りも見せない男の人に一歩…また一歩と近寄り、囁くような声でも会話できる距離に踏み込み…。
「驚いちゃった…貴方…隣のブースの人…?もしかして…私の声…聞こえちゃった…?」
その問いかけの答えをまたずに、その場で振り返り、パソコンに手を伸ばす。
当然身体は前に折り曲げないと手が届かない。
腰を曲げて手を伸ばす瞬間、ワンピースが身体を這い上がり、お尻を隠していたはずの裾がズリ上がっていくのを感じた…。
『あっ…お尻が…見えちゃってる…。
濡れたパンティも…後ろから…。』
その体勢のままコメントを確認すると、数多くのコメントに混ざり、あの人のコメントを見つけた…。
《はい…覗かれちゃいました…。濡れたパンティを擦るイヤらしい姿を…。
若い…。若い男の子…みたいな妄想です…。
優しそうな若い男の子に…覗かれて…。
ブースの中に入ってこられて…あっ…あぁ…恥ずかし姿を…間近で…。
恥ずかしい…。こんな格好を…見られて…恥ずかしいのに…。
興奮…しちゃいます…。覗かれたかった…恥ずかしい私の姿…覗いて欲しかった…。
シミ…どんどん拡がっちゃって…パンティが…吸いきれなくなって…太ももに…垂れちゃってる…。
どうしよう…覗かれて…ブースに入り込まれちゃったら…もっと…見せて…って…言われちゃうかな…?もっとジッパー開いて…もっと見せてって…言われちゃうかな…?
それに…従っちゃったら…。もう…触られちゃうかも…しれない…。
痴漢みたいに…イヤらしい手で…触られちゃうかもしれない…。》
更に妄想を重ねたようなコメントをあげて、後ろで立ち尽くす男の人に向き直り…。
「私…サイトで…露出の指示をされてるの…。こんなにイヤらしい格好も…サイトで指示されて…。
でも…貴方が目の前に居ることは…言ってない…。あくまでも…妄想として…コメントするだけ…。」
少しでも状況を理解してもらおうと説明するものの、獣と化すであろう男に対して無意味だと気づいていた。
しかしなぜか目の前の青年は、私を…私を取り巻く状況をも理解してくれそうな…そんな安堵感があった…。
【ありがとうございます…優しいお言葉に癒されます…。】
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