《そんなくだらねぇ指示したって、やってるかどうかもわかんねぇだろ…?やっぱ脱がした方がいいぜ。》
《そうそう…、言いましたよ、って言うだけで終わるに決まってんだからさ。》
美優の心を揺らす指示になっている、等とは夢にも思わないその他大勢が、まるで野次を飛ばすように吐き捨てる。
あながち間違ってはいない。
インターネット…、掲示板…、文字でのやり取り、という性質上、確認のしようがないのは事実。
それは当然、あれをしろ、これをしろ、これを脱げ、こんなポーズになって見ろ…などという指示命令も例外ではない。
どうせ嘘か本当かわからないのなら、もっと恥ずかしいことをさせろ、もっと厭らしい言葉を言わせろ、その程度の考えなのだろう。
しかし…。
《さぁどうでしょうか…。
私は、間違いなくやってると…思っていますけどね…?
よく目にするただ構って欲しいだけの女性とは違う…。私はそう思います。》
少しの間をおいて更新されるレス。
男は毅然とした態度で、他の声を無視することなく応えていく。
それもそのはず…。
「本当に…よくできた妻だよ…美優…。」
自らが書き込んだ直後、美優のブースに意識を集中させれば、何やらぶつぶつ独り言を言っているように聞こえる。
幸か不幸か、その言葉の詳細を聞き取ることはできなかったが、少し動いているようにも感じられ、
まさか…と、そっと自らのブースを抜け出すと微かに開いた扉の隙間から中を覗けば、云われるがままに壁に身体を寄せ、頬を寄せ、恥ずかし気に言われた言葉を呟いている妻のがあったのだから。
《いいじゃねぇの…、俺はそう言うの好きだぜ…もっと楽しませてくれや兄ちゃん…。》
野次馬のようなレスの中に、徐々に一定数美優が心を許し始めている男の言葉に賛同する声が見え始める。
ただただ煽り、恥ずかしい言葉や写真、動画を求めるだけの幼稚な男達だけではなく、雌の心を揺らす女にこそ魅力を感じる男たちもそこには存在していることもわかり始める。
他のスレッドに比べると、倍も三倍も違うスピードでレスの数が伸びていく美優のスレッド。
気づけば、注目スレッドとしてポップアップされていることがわかるほど。
《楽しくなってきたじゃん。次は次は…?》
《なんか盛り上がってんの?すげぇレス数伸びてるけど…。》
《黙ってログ遡れや、邪魔すんな。》
新参の書き込みには容赦なくメスが入る。
それほど、男たちを沸き立たせる注目の的となりつつあった。
《どうですか…。
思った以上に響いたんじゃない…?
ネカフェって…、個室が多いから、反響しやすいだよね…。
でもちゃんと言えたんだよね…?
偉いじゃん…。
ちゃんとできたらご褒美が必要だね…。
ジッパー…、もう少し上げても良いよ…そうだね…5センチくらいで…どうかな…?》
見透かしたような言葉。
実際は、全てを覗き見、全てを知っている男の言葉なのだから余計に信憑性が増す。
男のからのご褒美、ジッパーを上げても良い…細かくその長さを指定されて。
しかし、「どっちのジッパー」かは明記されていない。
ご褒美…とは、何なのか。
美優自身に、自分にとってのご褒美はどっちなのかを想像、妄想させるように悪戯にその心を弄ぶ。
ただただ卑猥で恥ずかしい行為だけを求める他とは違う。
心を辱める指示。
《今凭れかかっている、隣のブース…そのまま背を預けて…。
5センチ…、できます…よね?》
高圧ではない…、丁寧すぎる口調でもない。
それゆえに年齢層も想像しにくい。
どんな男なのか…、そんな想像も掻きたてるように。
少しずつ…少しずつ、確実に美優を羞恥と興奮の沼へと、引きずり込んでいく。
【こんばんは。
連日お返事を拝見できてうれしく思っています。
無理はなさらなくて大丈夫ですよ、1日1レスでも、数日おきでも。
返事をすることがプレッシャーになってほしくはありませんから。】
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