圭介くん
「ヒーロー同好会に?僕は別に構わないよ、どうせ暇だし・・・」
恐る恐る聞く私に二つ返事で入部してくれると言ってくれた。
子供の頃、戦隊ごっこで遊んだ“続き”と画策している事など思いもしていない。
だけど、何か圭介くんのニタッとした顔に少し気味の悪さは感じていた。
その上、何か不服そう・・・。
圭介くん
「景子ちゃんってさ、戦隊とかじゃ無くプリキュアとかのアニメが好きだったの?
写真見てるとアニメ物の着ぐるみ活動ばかりでヒーローものはスタッフとしての写真しか無かったからさ・・・」
私は女児向けの格闘番組などは無く、仕方なく男の子たちに交じって遊んでいた・・・。
そんな私が美少女モノの着ぐるみショーに出ているのだから疑問に思ってる様だ。
圭介くん
「まあ、アニメの着ぐるみの方がアクションも楽だし女の子だとヒーローショーの激しい動きとかって無理だろうしね」
この一言に私はムッとして、圭介くんを隣にある教室へと連れていった。
景子
「じゃあ、私の殺陣を見せてあげる・・・昔の様にゴッコじゃ無いと言う事を・・・」
私は教室の中央に立つと静かに目をつむると・・・
景子
「悪が蔓延る世の中に、咲いた一輪の花・・・レンジャー・ピンク参上!」
かッと見開き戦隊の名乗りを叫んで、そのまま殺陣へと入る。
流れるような一連の私の動きに圭介くんは唖然としている。
しなやかな肢体から繰り出される拳撃は空手の形を思わせる。
まるで本物の戦隊ヒロインがそこに居るかと錯覚してしまう程・・・。
景子
(ふん、どう?ゴッコじゃ無いって判った?)
どうだ!とばかりに視線を向ける。
子供の頃、ゴッコ遊びしていた幼馴染が“本物”になっていたのだった。
驚くのも仕方が無いと見ていると・・・
圭介くん
「そこまでだ、戦隊ピンク!今日こそ貴様に引導を渡してやる!!」
私の演技に乗る様に圭介くんは悪役を演じはじめた。
だが、普段運動もしていない彼の動きは鈍重で私に着いていけてない・・・。
それでも、何だか楽しい・・・私は察して攻撃が当たらない様に寸止めでの
即興の戦隊ショーを二人で演じてゆく・・・。
久しぶりに部活の感覚が蘇っていく・・・。
だが、そんな爽やかな寸劇もそろそろ終わりにしよう・・・。
彼を追い詰める様なかたちで、私の拳が彼の顔の前で止まる・・・。
何だか、やり切った爽快感か、これで納得した?と勝ち誇った笑みを浮かべる。
しかし、圭介くんはニヤリと笑うと私の腕を掴み後手に捻り上げてしまう。
寸劇が終わったと思っていた私の耳元で囁いた。
圭介くん
「おっと、暴れると人質がどうなっても知らんぞ」
景子
(え?・・・まだ続けるの?・・・仕方無いなあ・・・)
満更でも無かった私は挑発に乗ってしまう・・・。
彼は自分の制服のネクタイを解くと、私の両腕を後手に縛り上げた。
景子
「な、何をする!ひ、卑怯モノ!・・・は、放せ!」
見えない人質、敗北ヒロイン・・・幼い頃の記憶が蘇る・・・。
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