部室に入って来たのは景子だった
壁に貼られた写真を眺めていた為、僕の事を入部希望だと思ったみたいで捲し立てる様に勧誘してきた
ここ数日は僕を避ける様にしてたくせに…部員が少なくて廃部寸前って噂は本当みたいでなりふり構って居られないのだろう
景子にとっては貴重な部員候補、部室まで入った来た(一応)幼馴染を逃がしたくないのか、矢継ぎ早に活動内容まで説明をしだす
もっとも僕自身は景子との繋がりを少しでも増やしたいと思っていたので満更でも無く、ニタニタといやらしい笑みを浮かべながら彼女の話を聞いていた
景子「ねえ、入ってくれないかなあ?」
「ヒーロー同好会に?僕は別に構わないよ、どうせ暇だし」
恐る恐る聞いてくる景子に二つ返事で快諾する
子供の頃、戦隊ごっこで遊んだ“続き”が出来ると思うと自然と口角が緩む…ただ、一つ気になる事もあった
「景子ちゃんってさ、戦隊とかじゃ無くプリキュアとかのアニメが好きだったの?
写真見てるとアニメ物の着ぐるみ活動ばかりでヒーローものはスタッフとしての写真しか無かったから…」
昔は女児向けの格闘番組などは無く仕方なく僕たちに交じって遊んでいたのかもしれない
「まあ、アニメの着ぐるみの方がアクションも楽だし女の子だとヒーローショーの激しい動きとかって無理だろうしね」
この一言に彼女はムッとして僕を隣にある教室へと連れていった
ここは同好会が稽古場として使っているらしくボロボロではあるが旧校舎の壁は分厚く、大きな声や音を出してもそうそう外部に漏れる事は無いらしい
彼女は教室の中央に立つと静かに目をつむる…
かッと見開き戦隊の口上(名乗り)を述べるとそのまま殺陣へと入る。流れるような彼女の動きに僕は唖然とした
しなやかで新体操選手の様な身体の柔らかさ、その肢体から繰り出される拳劇は空手の選手を思わせる
まるで本物の戦隊ヒロインがそこに居るかと錯覚してしまう程、彼女の動きは凄くそして美しかった
どうだ!?という表情をこちらに向けてくる。子供の頃、ごっこ遊びに興じていた幼馴染が“本物”になっていた…それは僕を更に興奮させてくれた
「そこまでだ、戦隊ピンク!今日こそ貴様に引導を渡してやる!!」
彼女の演技に乗るかたちで僕は悪役を演じはじめた。っと、言っても普段運動もしていない僕は彼女の動きに着いていけない
でも、それを察してか攻撃が当たらない様に寸止めでの即興の戦隊ショーを二人で演じてゆく
…だが、そんな爽やかな寸劇もそろそろ終わりにしよう
僕を追い詰める様なかたちで景子の拳が顔の前で止まる
彼女の顔に目をやるとやり切った爽快感か、あるいは勝ち誇った笑顔かどことなく嬉しそうだ
その顔をみてニヤリと笑うと彼女の腕を掴み後ろに捻り上げてしまう。寸劇が終わったと思っていた彼女の耳元で
「おっと、暴れると人質がどうなっても知らんぞ」
まだ続いていると思わせながら、僕は制服のネクタイをほどき景子の両腕を後ろ手に縛り上げた
[こんにちは]
いろいろ考えていたらグダグダの長文になってしまいましたm(__)m
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