まりと浜中は一緒に倉庫に向かった。
本当は布巾なんてどうでも良かった浜中、まりと個室に入って
二人きりになり、ときめいている。
私は特に彼に特別な気持ちは持っていなかった。
ただ、同年代でちょっと手の掛かる彼に同情する事はあっても
好感を持つまでには至っていなかった。
グループリーダーをしている私は、歳上の介護職員の指導もしなければ
ならない事もあって、気が休まる事も少なかったのだ。
日頃は同年代の人と関わる事も無かったから、行動に気を使う必要も
無かったのでさっきみたいに気を抜いて恥ずかしい格好もしてしまっている。
今も彼が居るのに脚立に登って布巾の箱を下ろしている。
彼が私に興味を持って視線を向けているなんて思ってもいない。
まり
「はい、これで良い?また何かあれば呼んで・・・」
私は彼の視線も感じずに仕事に戻る。
もうじきちさとのやってくる時間・・・。
近頃は他のスタッフも慣れてくれて、面倒を見てくれる。
でも、私の仕事を見て、自分も同じお仕事に就きたいと言ってくれるのは
嬉しいが、私がスタッフに指示しているのを見て、自分も同じ立場の様に
思っているふしが感じられた。
可愛がって貰える人ばかりだからそれ程問題は無かったのだが・・・。
ちさとは、少し人見知りするところがあって、初めての人間には警戒する。
今も私を見付けてやって来たが、彼を見るなり私の後ろに隠れてしまう。
ちさと
「お母さん・・・この人って使えない人なの?・・・」
まり
「これ!ちさと、失礼なこと言っちゃダメ・・・ごめんね
浜中くん・・・」
まさか、家で愚痴った事を言っちゃうなんて・・・。
ちさとは優しい女の子なんだけど、勝気な私に似たのか言い方がきつい。
特にここではみんなに可愛がられているので少し高飛車になっている。
最初は私の後ろに隠れたかと思うと、彼が他のスタッフさんの様に自分を
特別扱いしてくれると感じると椅子に座って脚を組んだ。
小さい小悪魔的に自分が可愛らしく見えるスタイルを学んでいた。
それとも、私があんな風にしているのかな・・・。
親娘して見られる事への警戒心が無かったのだ。
※元投稿はこちら >>