「じゃあ、行ってくるから。あまり遅くならないと思うし、ご飯なんか適当に買って帰るから待っててね。それと…、動画は適当に撮ってくればいいんでしょ?」
自分で言い出したくせに、少し泣きそうな不安げな表情の優に最後の確認をし、佐藤と歩き出す。
少しずつさりげなく距離を詰めてくる佐藤に対し、その度に露骨に距離をとって、嫌がる態度を隠さない凛花。
半笑いで「手でも繋ぐ?」なんて言ってくる佐藤を見上げて睨みつける。
「行きつけのホテル、だなんて。寝取り師なんて言うくらいですから、色んな女性と寝ているんですよね?はっきり言いますけど、私、そういう男性嫌いですので。優は少し情けなくて頼りないけれど、一途でカッコいい男だから好きなんです。」
はっきりと嫌悪感を示し、忍ばせてきた手を払いのけた。
翔太の優を見る視線は、学生時代にカースト上位の生徒が優を小馬鹿にする時の目と似ていた。
(こういうやつに限って、『優なんかと何で付き合ってんの』とか言ってくるのよ…。優のこと何にもわかってないくせに…)
凛花に言い寄ってきた過去の男たちと重ね、どこか冷めた表情でホテルに入る。
手慣れた手つきで一番高い部屋を選ぶ翔太には、
「…部屋なんてどこでもいいですけど。」
なんて、冷たく吐き捨てた。
「分かりました。お言葉に甘えてお先に…。あっ、お水は自分で用意してきたので…。すみません。」
部屋について、荷物を下ろすと、早速シャワーを浴びるように言われる。
シャワーも一緒に浴びなくてはいけないのか、と内心思っていたため、少し安心した。
翔太が飲み物を渡そうとしてきたが、それさえも断る。
(何入ってるかわかんないし、ああいうの…。なんか変な薬とか入れて、寝取り師とか言ってんでしょ、きっと。…あー…、なんだかんだ言ってもちょっと怖いな…。私、優としかシたことないし…)
脱衣所に入り、手早く脱いで傍らに服を畳み、シャワーを浴びる。
強気な態度や露骨な嫌悪感は不安感の裏返しであり、1人になると恐怖が強まっていった。
※元投稿はこちら >>