吉澤くんは要領が良く、ベテラン看護師からコツを学び
上手くお仕事をこなしていく・・・。
私と同じシフトで夜勤をこなしている時もそうだった。
私がしようとする前に、自分から片付けようとしていた。
結果、指導すると言うよりミスの確認をするだけになっていた。
余計な気を使わない分、ストレス無く私はお仕事にも余裕が出来て来た。
他の女性看護師からも厳しい師長が優しくなったと言われ出していた。
それと同時に、お堅い師長が男にうつつを抜かせていると陰口をつかれて
いるようだった・・・。
もちろん、私にそんな気持ちは無い・・・。
彼の告白にもきっちり断ったはずだった。
今日も一緒に夜勤明けの引継ぎを行う。
既に吉澤くんに引継ぎの主体を任せられる程になっていて
私は確認だけを行えば事足りる様になっていた。
今朝は山崎主任が日勤担当・・・吉澤くんは淡々と引継ぎを行った。
山崎主任は吉澤くんに好意的な眼差しを向けているが、彼は目線すら
合わせようとしない。
私から見れば、十二分に山崎主任は魅力的なはず・・・。
なのに、彼は私に向ける眼差しとはまるで違う・・・。
引き継ぎも終わって、別れ際・・・。
彼は私に向かって、話があると声を掛けてきた。
山崎主任にも聞こえたはず・・・。
私がロッカー室に向かうと、並び掛けて声を掛ける。
更衣室前で待っていると言うのだ。
着替え終えてロッカー室を出ると、彼が待っていた。
それから二人で駅に向かった。
それからずっと、他愛の無い会話だったがずっと彼は
恋人に囁くようにちさと・・・ちさとと私に話し掛けて来た。
確かに二人だけの時はそれでも良いと言ったが今迄は夜勤中とか
日勤でも二人になった時だけ・・・。
他人から見たらどう思うだろう?・・・。
まさに噂通りじゃない?・・・。
だけど、嫌じゃ無かった・・・と言うより・・・ときめいてしまう。
徐々に彼が本気で私に好意を抱いていると思い込まされていく・・・。
師長と新人看護師という関係がまだ、どうにか理性を私は保つ事が出来ていた。
ちさと
「吉澤くん・・・外じゃダメ・・・約束でしょう?・・・」
私は嗜めたつもりだったが、これでは噂の上塗りのようなモノ。
徐々に噂は現実的なモノとして広まって行く・・・。
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