「いらっしゃい…、沙弥ちゃんか、ということはもうそんな時間か…。」
割と客入りも良い喫茶店。
昨今のおしゃれなカフェ、とは逆行するようにレトロな雰囲気を意識した造りが一定の層を囲い込むことが出来ている様。
そう遠くないところに、有名な某フランチャイズのカフェも店を構えているが完全にターゲットの差別化には成功していた。
当然、客層は中高年層。
落ち着いた雰囲気の店内、今どき当然のように設置されているスマホ充電用のコンセントもなければフリーWi-Fiもない。
完全に排除したいわけではなかったが、忙しいサラリーマン層やスマホを片手に入り浸るような若者ではなく、のんびりと友人、知人との時間を過ごすことを目的に訪れる客を大事にしたかったのだ。
そんな層が賑わうのは正午からお昼過ぎの時間。
一見すると、場違いともいえる今どきの女子高生が訪れる時間には店内も落ち着き始めていた。
「はい、お待たせ…。
最近はお父さんより、沙弥ちゃんの方がよく来てくれるようになってきたね。」
沙弥の父も毎週のように足を運んでくれている、それでも週1回程度、多くても2回が限度か。
仕事も多忙を極めるようで、カウンターに腰を下ろせば漏らすのは愚痴か…
「いつも沙弥ちゃんの話を良くしてくれるよ、あいかわらず子離れ…娘離れのできないお父さんだね。」
そう、愚痴か娘の話ばかり。
そんな溺愛する娘の少し変わった話を聞いたのはほんの少し前の事。
性への嫌悪感の低さ…、もとい、ないに等しいとまでいうくらい。
まぁ、何をもってそう判断したのか気にもなったが、そこは言及しなかった。
そんな話を聞いてから初めての来店になるのか。
不思議なもので、一つ違った情報が入ると人の見え方は変わるものだ。
いつも元気、にこやかで快活、人当たりも良く愛想も良い。
そんな少女とのやり取りが楽しく、自分の娘と話しているかのような時間を過ごせていたはず…なのに、
その一件を耳にしてしまえば、自然と視線は沙弥の身体の方にも向いてしまう。
「あぁ…。
スカートも凄く似合っているよ…?もっと女の子らしくなった…と言ったらいいのかな?
もちろん誉め言葉だよ…?」
そんな大人の都合を知ってか知らずかようやっと慣れが出てきたスカート姿を確認させるような言葉が飛んでくる。
内心を見透かされたのかとヒヤッとしながらも、相変わらず、らしさ、が全面に出たいつもの沙弥であることにほっと胸を撫で下ろす思い。
すらりと伸びる透き通った色白の皇かな太腿。
中年の最中にいる男が、学生時代見ることなど決してなかった驚くほど整った身体つき。
同じ人種か疑いたくなるほどだ。
「ぱんつ…が食い込むのかい…?はははっ。
女の子がそんな、ぱんつとか、食い込むとか、言って大丈夫なのかい?沙弥ちゃん。」
立て続くように、スカートから下着が食い込むなどという話への発展。
父親の言う事はあながち間違ってはいないようだ。
見知った間柄とはいえ、下着の話など容易に口にするものではないだろう。
今どきの女の子は皆こうなのか…?
そして、徐に立ち上がれば大胆とまでの動き。
目の前で食い込んだ下着を整えなおしたのか…?
無頓着なのか、無防備か…。
羞恥心…という物が感じられない…。
「もしかしたら、まだまだ沙弥ちゃんの身体も成長しているのかもしれないね…?
背が伸びるにつれて、服が小さくなるのと同じさ…。」
間違っても女の子に、お尻が大きくなったからパンツが食い込むんじゃないのか?などというわけにもいかない。
ニュアンスで察してくれればそれでいいのだ。
ただただ、会話の中でうまく受け止めて言葉を返しただけの事。
「実際、背も少し伸びたように感じるしね…?」
ホールの隅の柱には数本切れ込みがあり、その横には年月が記載されている。
小さい頃から見てきた沙弥の成長の記録。
面白半分で沙弥が落書きしたのを見て以来、時折背の伸び具合をそこに記していたのだ。
「最後に記したのは…、もう1年も前になるのか…。
受験生だの、勉強が嫌だの言いながら逃げ込んできたのが懐かしいね…。
お客さんも今はいないし、高校生になった一回目。
印、つけておこうか?」
カウンターから出ると、柱の方に向かって歩きながら振り返り、そんな話を。
【元教員設定はもちろん問題ありませんが、わざわざその設定を使う時が来るのでしょうか?
またタイミングでご教示頂ければと思います。】
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