この場から逃げ出そうとするあなたの前に、男が立ち塞がります。
「ねぇ、まろんちゃん」
そこまで口にして、言った本人も躊躇があったのか、数秒の間があって、
「ここでオナってみせてよ」
心の奥の下品な欲求を隠すことなく、そう告げました。
大声を出したわけではないため、会場中に聞こえるなんてことはない。だけどひそめたわけでもない声は、あなたを囲んでいるファンたちの、少なくとも十数人の耳には届いたことでしょう。
いつものイベントであれば、良識を持ったファンが制止したことでしょうが、あなたのいやらしい姿を見せつけられたファンたちは、多かれ少なかれその熱気にあてられていました。
積極的にやれ、やれと乗ってくる者こそ四、五人程度。残るファンたちからはあなたが拒絶さえすれば強制はされないことでしょう。しかしこの時点でそれを咎める者は一人もいませんでした。
あなたの答えを待つように、男たちの視線とシャッターの音が集まります。
「掲示板でのお楽しみ、って言えばわかるよね? 大丈夫、これだけの人数で囲んだらスタッフだって気付かないよ」
実際、普段のイベントの二倍、三倍のファンたちがあなたを囲んでいます。
以前から少なからずいるローアングラーはもちろんのこと、カメラではなくスマホを構えて撮影している人たちの数もいつもよりずっと多い。
そのおかげというべきなのか、男たちが壁を作って、あなたを周囲から隔離していました。
「あんなに話題になったのに、あの日と同じ下着ってことは、そういうことでしょ?」
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