今まで数え切れない程に訪れた部屋。
お互いの生活に何らかの変化がもたらされた時…。
真弓から呼び出された事もあった…。
もちろん私から駆け込んだ事もあった。
喜怒哀楽…あらゆる感情をお互いに慰め合い、喜び合った大切な場所。
そんな居心地のよい癒やしの場所であったはずの場所。
もちろん真弓が泣きながら電話を掛けてきた時には、胸騒ぎのまま駆けつけたこともあったものの、今この部屋に足を踏み入れる時の胸騒ぎは、その時のものとは異質のもの。
恐怖と不安、それと同じくらいの興味が私の心の中で渦巻いていた。
玄関ドアを開けた途端。聞き覚えのある機械的な唸る音が聞こえる。
赤いランプが点滅するそれは私の動きに合わせて首を振りながら追い掛けてくる。
『やっぱりこの部屋にも…。』
私にコンタクトを取ってくる男と、真弓に手を出している男が同一人物ではないかという疑念が益々強くなる。
指示通り壁に張り紙がある。部屋の中を見て回れ…。変化を感じてみろ…。そんな言葉に促されて周りに視線を向ける。
あらゆる所に仕掛けられたカメラ。それは逃げ込む場所などない程に、どこに居てもその姿を捉えられるまでに張りめぐらされたそれは、お前にはプライバシーなど存在しないと言っているように思えた。
『こんなにガメラが…いつの間に…。』
驚愕の表情を浮かべるものの、不思議とそこには恐怖の感情はなく、『興味』そのものだったのかもしれない。
部屋に続く廊下。トイレ…洗面所…バスルーム…。どこを見てもカメラの存在を確認できる。
部屋の入口の扉を開けて再び驚愕の表情を浮かべる。いたる所…そう…無数のカメラがそこに存在する者を逃さす監視するように設置されていた。
『こっ…これって…。盗撮レベルじゃない…。逃げ場なんて…どこにも無い…。』
常に誰かの視線を感じながら生活する事のストレス。心安まる空間なんてどこにもない部屋の中で…そんな生活が私にできるだろうかと不安にもなる。
そんな私の心の中を見透かしたようなメールが届く。
『私の心の中が…わかるの…!? 』
カメラだらけの部屋の中を見て、明らかに動揺している私。その内心を透かし見たかのように私の心を抉る言葉。
真弓の言動を引き合いに出し、揺れる私の心を煽るような言葉。
『真弓にできるなら…私にだって…。』
ブラウスのボタンに指先が触れる。
その感覚に脳が危険信号を発するかのように、伸ばした指先を一瞬引き戻す。
次第に震え始める膝。カクカクと小さくではあるものの確実に震え始めた膝の振動は、次第に全身へと波及するように伝わっていく。
『真弓の部屋で…全裸になんて…。全部脱いだ時…真弓が帰ってきたらなんて言い訳するの…?』
留守中に勝手に入り込み、全裸でいる姿を目撃された時の羞恥。それを考えると今までに感じたことのない羞恥や惨めさを感じる。
『でも…このままじゃ…あの人は真弓を選んでしまう…。真弓よりも…私の方が…。』
一人の男性を複数の女性が奪い合うような心理戦。
他の者よりも自分の方が優れている…私の方が他の女よりもメリットがあるとアピールするような…まさにそんな感覚。
真弓が留守のうちに…。真弓に見つからないうちに…。焦りの中であの人を私の側へ惹き込もうと企み、指示通りに行動しようとブラウスのボタンをひとつ外す。
と…その時…再びメールが届き、その内容に驚きの表情を浮かべ、閉ざされた寝室の扉を見つめる。
『えっ!?真弓…居るの!?この部屋に…最初から居たの!?』
震えが止まらない。扉一枚隔てた向こう側に、あの人と同じように私を試すかのように様子を窺っているなんて…。
私が指示を拒んだとしたら…『貴女の分も私が受け止めるから…。』と…勝ち誇ったような笑みを浮かべるに違いない…。
それは友人の身を案じるような美しいものではなく、自らの欲望を果たすためにパートナーの奪い合いに勝利した歪んだ笑み…。
『負けられない…。私…真弓には負けられない…。』
再び姿見の鏡に正対すると、ブラウスのボタンをひとつ…ふたつと外していく。
それは先程の戸惑いを感じさせることはなく、何かを決意した強い意志を感じさせるかのように。
ボタンが外されていくと中からブラに包まれた豊かな膨らみが見え始め、ボタンを外し終えたブラウスを潔く脱ぎ捨てる。
腰に回した手がスカートのファスナーをジリジリと音を響かせて下げ、ホックを外し終えるとスカートを掴む指の力を緩める。
ハラハラと舞うように脚を滑りながら床へと落ちるスカート。
ここ数日、世間から見放されたような胸中で過ごしていた私。その日の下着は、誰に見せる訳でもないと言うのに、無意識に透け感のあるものを選んでいた。『透け感』と言えば当たり障り無く聞こえるものの、実際の生活の中に於いて下着としての機能を果たすものではなかった。
上も下も素材の全てがレース生地のそれは、夜の営みで用いるプレイ用とでも言うべきか…。
肌に張りつく赤い薄手のレース生地。
そんな下着とは言えないような代物を一日中身に着けて過ごすなど聖職者として常識では考えられなかった。
姿見に映る自分自身を見つめ、恥ずかしい内面を隠し持っていた今日を思い返す。
それはまさに見える部分だけの話しではなく、私の心理そのもの。内面に隠し持った羞恥の欲望を目に見える形で再現しているように思えた。
『そう…これが私の本当の姿なの…。恥ずかしい下着を隠しているように…私は…心の中に…恥ずかしい想いを隠し持ってるの…。』
ゆっくりと背中に腕を回しブラのホックを外す。
元々締めつけなど存在しないブラ。ホックを外しても丸い膨らみの形に変わりは無く、両腕を滑り落ち透けていたふたつの丸みが露わになる。
全身が薄い桃色に染まっているのがわかる。赤く染まった頬。潤んだ瞳は蕩けたような表情を浮かべて姿見を見つめる。
『私なら…真弓よりも…あの人を悦ばす事ができる…真弓には…負けたくない…。』
そんな想いが最後の一枚すら躊躇うことなく剥ぎ取り、友人の部屋の中でついに全裸を晒し…。
『真弓が覗いているかもしれないのに…。全部脱いじゃった…。もうでしょう言い訳できない…。
あの人が望むように…何でも…。あの人が望むなら…どんな事だって…。』
蕩けた表情で姿見に映る私は、自然と両手が自分自身を撫で廻すかのように這い回り始める…。
【遅くなりました。
興奮しきれない…そうですね…。でもこの先の展開には心の動きと言うか心理描写みたいな展開も必要なものだと思いますので…。
大丈夫です…伝わっています。直接的な指示と言うよりも心を煽るような指示に翻弄されて想像以上に乱れる切っ掛けにもなると思います。
もちろん、こうしろああしろと指示されて乱れていくのも楽しいと思いますし…。
私があまりにも暴走してしまうと、お考えの筋書きが乱れてしまうかもしれませんから…。
現状ではあくまで私は受け身の立場だと思いますので、指示に従う…そんな感じなのかな?と思います。
とは言っても…たまに暴走してしまうかもしれませんが、その時はよろしくお願いします。】
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