こんなに私を淫らな世界に惹き込んでおきながら…。
そんな想いを込めたようなメール。
それでも縋るように私をもう一度…女として見て欲しい…と想いを込めて送ったメール。
あれ以来、あの人からは何の返信も無い。
やはり真弓を選んだんだ…。
そんな哀しみに満ちた気持ちは自分でもどうすることもできない落ち込みとなっていた。
ほんの短い期間、たった数日とは言っても、私に興味を向けてくれる男性だった。
友人への嫉妬と言う醜い感情も芽生えながら、友人よりも私の方へ…そんな想いが有ったことは間違いない…。
「やっぱり…真弓の所に行っちゃったのかな…。」
仕事を終えて自宅に戻ると、必ずそんな呟きを漏らしていた。
干したままの下着…私を追い続けるカメラはそのままに。
だからと言って自分一人の快楽の為に自慰に及ぶこともなく、ただなんとなくあの日のままにしておけば…もしかしたら…。
そんな諦めきれない踏ん切りの悪さだけが露呈する日々を過ごしていた…。
「えっ…!?ごっ…ごめん…なに…?」
放課後の職員室。普段通りに雑務をこなしているつもりだった私に、遠くから呼ばれているような感覚に周りを見ると、すぐ隣に結城里美が私の横顔を覗き込むように立っていた。
「あっ…えっと…なに…?」
何かを話し掛けられていたのかすらわからない…。
まるで心ここにあらず…そんな姿に見えたのだろう…。
心配してなのか…単なる好奇心なのか…噂話のネタ探し…だったのか…。
「えっ…?うん…大丈夫…何でもないの…ホントに…。ありがとう…。」
慌てて目の前の仕事に向かう振りをしてその場を切り抜ける。
失恋…。確かにそう言う状況でもあるのかもしれない…。
その時、机の上に置いたスマホが聞き覚えのある震え方でメールの着信を知らせてくる…。
『コレって…。あの人からだ…。』
慌てて飛びつくようにスマホを手にすると、周りを気にしながらメールを開く。
久し振りに心躍る感覚を得ながらも、とどめの最後通告を申し渡されるのかと言う不安も感じていた。
『真弓よりも…私が…優れている…?それを証明って…どうしたら…。』
メールを読みながら、一喜一憂するような文面に、顔色はコロコロと変わっていたのかもしれない。
それを結城や他の教師に見られていたとしたら、不審に思われたに違いない。
それでも、そんな周りの感情を気にする余裕など無く、この機を逃したらもうチャンスはないと思い、送られてきたメールを何度も読み返し、その真意を探ろうとする。
『どう言う事…?真弓ではつまらない…自己犠牲…?
必要とされるなら…誰のことも関係ない…?
自分のことを…犠牲にすることも…厭わない…?』
メールの内容を読み返し、その言葉の意味を…あの人の真意を考えた。
『私には…何ができるんだろう…。』
目まぐるしく廻る思考…。何を求められているのか…どんな事が自分にできるのだろうか…。
過去の付き合いの中でも相手が望むことは何でもしてきたつもりだった。
望まれたことを断った記憶もない…。
どんなに無茶な望みでも叶えてきたつもりだった。
そんな私なら…あの人の望むことも…受け入れられる…。
もう迷っている暇など無かった。このチャンス…最後に与えられたこの機を逃せば次は無い…。
そんな想いが心の奥から込み上げてくる。
それと同時に、私に求められる淫らな行いを考えてしまえば、自然と身体の芯がジワジワと熱く昂り、潤を滲みだしているのがわかる。
『今夜…真弓の部屋で…いったい何が起こるの…!?』
メールに返信することはなく、約束の時間にそこへ行けばそこにあの人の望みと私の答えが見つかるはずだと思い、急いで帰宅すると時計を気にしながら友人の家を訪ねる。
21時少し前、彼女の部屋の前に立っていた。
『この扉の向こうに…何があるの…?』
時計を見るとあと少し…21時ちょうどにドアノブを回そうと手をかける。
それはまさに禁断の扉なのかもしれない。
そこから先が、本当に後戻りできない世界への入り口なのかもしれない。
恐怖や不安…好奇心や昂り…。
複雑な想いが私の心の中に渦巻き、私の思考を乱していく…。
『私なら…大丈夫…。真弓よりも…あの人を楽しませることができる…。あの人を悦ばせる事ができれば…私にも…新しい快感が…。きっとそう…私なら…できる…。』
時計の秒針が頂点に達した瞬間、玄関ドアのノブを捻り、鍵が開いたままの扉を静かに引き、中へ入る…。
【張り紙の内容…勝手に決めてしまおうかと思いましたが、雄二さんのお考えを邪魔してもいけないと思い、ここまでにしました。
張り紙の内容…何が書かれているのか…楽しみです。】
※元投稿はこちら >>
下着を盗まれて。