解放。
自らを辱め、羞恥の限りを尽くさせられた男からの突然の不要発言。
本来であれば飛んで喜んでもおかしくないはず。
しかし、その内容を確認する最中、あるいは先ほど届いた返信を綴っている時の様子を見ても、明らかに喜びとはかけ離れた、むしろショックを受けている様子に見える。
俯き、肩を落とした情けない姿。
到底、下着泥棒に千度下着を汚された被害者の様相ではない。
そして送られてきた文面からも、その心情が色濃くにじみ出ていた。
「貴方の言う事…全て叶えられる…ねぇ…。
それが本当かどうか…、試すのも面白そうだけど…。
もうちょっと…揺れてもらおうかな…。」
にやりと笑みを浮かべたまま、真弓を汚したその部屋でPC越しに気絶するように眠りに落ちた京子を見届ける。
-数日後-
2,3日、男は何もしなかった。
当然下着に手を付けることもなければ、手にした鍵を使うこともない。
しかし、毎夜京子のベランダの見える場所へは足を運んでいた。
日中も仕事を進めながら、ベランダが見える位置へと来るときは様子を伺っていた。
連絡をしないことで、諦めるのかの確認も兼ねていたが、カメラの電源が切れることもなく、下着は依然としてベランダに干されたまま。
まるで、捨てないで…と、捨て猫が飼い主に最後に向けるまなざしのようにも感じられる。
「んせ…先生…、竹本先生??
大丈夫ですか…?顔色が優れないようですけど…体調でも悪いんですか…?」
声をかけたのは、結城という女教師。
あの日、全裸の京子が息をひそめていた個室の外で皆藤と話していた女。
「それとも…失恋でもしちゃいました…?
竹本先生綺麗なのに…、見る目のない男ですよね。むかつくなぁ…。」
何も言っていないうちに勝手に決めつけ、そして否定する。
あながちズレたことを言っているわけでもなかったが、結果的に必要とされたい男を結城は否定したことになる。
兎にも角にも、周囲に気にされるほどに気持ちが沈んでいる状態が表に出ている状態。
それが今の京子なのかもしれない。
ブーブブン。
そんな中、交友関係もそんなに広くない京子のスマホが震える。
連絡を寄こすと言えば、数か月に1回の頻度で母親か。
最近は、真弓…そして、例の男からの連絡くらいの物。
しかし、その音バイブパターンはいつもと違い、連絡が来なくなる少し前に、男からの連絡を区別できるように京子はパターンを変えていた。
「どうですか…。
数日…、平和に過ごせましたか…?
カメラも、下着のことも、もう続けなくてよくなっているというのに、変わらない状況を送り続けてくださっていることに少し気になってしまいましてね…。
それとも、解放されたのが悲しかったですか…?辛かったですか…?
最後のメール…、私なら…貴方の言う事…全て叶えられる…。という言葉…。
これが本当なら…、私も思うところがありましてね…。
この女より…、真弓よりも貴女の方が優れている…、そう言いきれるのなら…、そう言う話です。
確かに真弓は、自分が犠牲になるから、京子には手を出さないでくれ…と、私にはっきり言いました。
それなら…、と、真弓がどこまで楽しませてくれるのかに期待した。
でもね…、やっぱり物足りないんです。
自己犠牲なんて…つまらない。
誰かを貶めてでも、穢して…汚してでも…、必要とされたい。
逆ですね、必要とされているなら他の誰のことも関係なく、犠牲にすることを厭わない。自分のことも含めてね…。
そんな女がやっぱりいいんですよ…。
できますか…?貴女に…。
できる…というなら、21時ちょうどに貴女の親友…真弓の家に行ってください。
鍵は開けておくようにしますので、インターホンは押さず、勝手に入ってください。
続きは玄関わきの壁に張り紙をしておきますので…。
貴女が真弓以上、だということを証明してください…、私を…求めているなら…ね。」
意味深なメールは男の専売特許か。
時間も場所も選ばず京子の心を弄び、辱めようとする。
数日というインターバル。まるで放置プレイのそれのように京子の心をかき乱す。
【もう少し描こうかと思ったのですが、徐々に京子さんのお返事があって次のレスが成り立つような展開でもあるなと思い、一度区切りました。
今回の私のレスもそうですが、内容によってはある程度の文章量で区切った方がいい場合も出てくるかと思いますので、もしそうなったときは気にせずそうされてくださいね。
いつも十分すぎる文章量にとても楽しませていただいています。】
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