車の中でその時を待ちながら、何気なくPCを眺めている。
程よい時間で真弓から音声データは送られてきたが、やはりあの後は少しのやり取りでカフェを後にしたようだった。
ぎりぎりの時間で送ったメールだったが、ちゃんと確認できたらしい。
男からの指示で、こんなことを言っている、と京子には伝わった。
脅しに聞こえただろうか…。
いや、脅しの意味も含まれている、その要素がなければ従わない可能性が、まだ、残っていると考えていたからだ。
偶然から始まった、女性を軽視するような男の行動、下着泥棒。
一般的には、異性の目に触れないように注意して振る舞う物。
それを盗み…汚し…、それを餌にまた辱める、一部の女性に至ってはそれで人生が狂わされてしまう。
そんな様子を少し離れたところから舐めるような視線で楽しむ、卑劣で醜悪な男の最低の趣味だ。
「しかし、真弓…そうとうハマってやがる…。楽しませてくれるぜ…ほんと…。」
ほぼ一部始終を聞いてはいたが、興味を向けていることを悟られないためにもあまりあからさまな動きは取れなかった。
その分、送られてきた音声データは全てをはっきりと聞ける、改めて真弓の内情を把握すれば疼くものは多い。
そんなことを考えていれば時刻はいつものように、深夜0時を跨ごうという時間に差し掛かる。
予報は的中、大粒の雨がフロントガラスを激しく叩く。
その音に導かれるようにその先の京子の部屋に目を向ければ、下着は吊るされたまま。
「これが答え…ってやつか…。竹本京子…。
いいぜ…、行くとこまで行こうか…、あんたは真弓より上なのか…下なのか…。
示そうとしてるんだよな…?」
独り言、しかしいつになく饒舌になってしまう。
それだけにわかりやすく反応を見せる京子の行動に、むしろ男の方が絆されているような感覚さえ覚える。
酷い雨、風も弱くはない。
そんな中を男は悠々と歩いていく。
仕事柄、雨の中での高所作業も少なくはない、この程度の天候でどうこうなるようなことはなかった。
微かに漏れる光…。そして揺れるカーテン。
男の忠告のような心配の言葉は、考え方を変えればそっくりそのまま指示となる。
下着が無いなら行く意味がない、下着があれば行くように聞こえる。
そして、雨を懸念した窓の開閉
それらは寄り今夜を京子に意識させる言動に他ならない。
「良い子だ…。
ちゃんと、真弓への命令を理解してるんだな…。」
べランダへと入りこむ。
さすがにこの雨の中、音を立てずにというのは無理があるが、それをかき消して余りあるほど強い雨音がそれらを遮ってくれる。
いつも同じような時間。
京子もきっと、それを理解しているはず。
ここで大きくカーテンを開き、強硬手段に出ればそれでことはしまいにできるはずなのに、きっとそんなことはもう頭の中にはないのだろう。
「は…は…やっぱり、このスリルだな…。こっちがハマっちまいそうだぜ…。」
かすれるような小さな声を漏らしながら、男は股間を露出させ、雨で少し湿気ている下着で包む。
激しくいきり立つソレは、下着に包まれることで激しく脈を打つ。
果てたわけではない、しかしその瞬間に、とくとく…っと先端から溢れ出すような感覚を覚える。
じわっと、先端に触れた部分にシミが大きく広がる。
男のモノは、一定以上の興奮を越えてしまった瞬間に、射精に近い感覚でカウパー…俗にいう我慢汁が溢れることがあるという。
正にその状況。
膝が笑い‥そして、童貞が挿入した瞬間に果てるときのようにその日は一瞬だった。
「くは…っ。」
日中の出来事に衝撃が大きかったのもあるかもしれない。
二人の女が水面下で知らずに同じ男に辱めを受けている、そんなことを知らず、自らの欲求を隠す女、晒す女。
そんな対照的な女を実感し、興奮が過ぎたのかもしれない。
「は…はぁ…はぁ…。」
どろっとした精液は、いつにも増して粘度が高く、臭いもきつい。
睾丸から全て搾り取られるような感覚さえ覚えながら少し脱力を感じるも、その場にとどまることは許さず、その場を後にする。
当然のようにその場に残された、どろどろに白い液体に塗れた下着。
あの日のように吊るしなおすことはしなかった。
まるで使い捨てたように、いつでも汚せる、いや、使ってやったぞ…とでも示すかのように。
雑に使われてしまった下着の姿を見て、京子は何を思うのか。
男は知らなかった、窓を開けて外の様子を少し前に京子が確認したことを。
そして男の背後、いや、すぐ脇、カーテンの奥でスカートを捲って立っている京子がいたことを。
時間にしてほんの10分程度の出来事。
男はいつものように去っていった。
ベランダに、精液まみれの下着を残して…。
そして、その下着を取り上げようと京子が手を伸ばせば気づくことになる。
どろどろの精液で汚れた下着の下に、カメラが部屋の方に向いて置かれていることを。
盗撮…ではなく、はっきりと存在を示したカメラ。
微かに聞こえる起動音、動いている。
男からはなにも指示はない。
しかし、その男の目の代わりになっているようなそのレンズは確かに京子の…角度的には立った時の股間辺りを向いているだろうか。
ぼたぼたと雨粒が下着を濡らしながら、少しずつベランダに雨水に溶けだした精液が白く滴り、流れていく。
まるで思考する時間を与えないかのように、止まれば下着は汚れを落とす。
それは京子の望むことか…?
そんな瞬間的な表情さえも、車に戻った男はカメラ越しに捉えていた。
【いつも本当に素敵です。
今回も京子さんの葛藤を生々しく楽しませていただきました。
もちろん、必要以上に脚色する必要はありません。
貴女自身の心をそのまま反映させてくだされば、それが私にとっては最高ですから。
いつもありがとうございます。】
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