真弓と話し始めたとき、真弓の言葉は私としては半信半疑だった。
真弓がもう一人の女なのではないか…?
そんな疑念を抱いていたものの、比較的じたくが近所だと言うだけで真弓がそうである確証などなかった。
なぜなら以前から親しく付き合う真弓は、同い年でありながらも私にとっては妹のように感じる存在。
世間知らずといえば聞こえは悪いかもしれない。
あえて言うなら『すれていない』とでも言うべきか…。
何もかもどこから見ても、深く知れば知るほどに真弓という女は何も知らない女の子だったのだから。
見た目もその通り。幼く見える顔つきも手伝って、少女のような雰囲気を纏う真弓は、清純そのものに見えた。
その頃私はと言えば、付き合う男は誰も彼もろくな者ではなく、いいように利用されるだけ利用されて、用が済めば捨てられる。
そんな繰り返しの中で、過去の男達との間には、妹のように感じていた純な真弓には到底話せない事ばかり経験もしていた。
私とは真逆のような女性…それが真弓に対する私の印象。
それは必ずしも私は卑下する事でもなく、どちらかと言えば真弓が知らない色々な大人の遊び方を知っているという優越感にもなっていたのかもしれない。
それが真弓の告白を聞いてからと言うもの、その立場は逆転し、焦りにも似た気持ちに苛まれる事もある。
下着泥棒からのメールを読んだときもそう…もう一人の女性が真弓だったら…。
そう感じたときは、真弓よりも注目されたい…真弓よりもこの人を楽しませなければ…。そう思った事も嘘ではない。
今日の真弓からの告白も、半信半疑で聞き始めた話にいつの間にか惹き込まれている自分がいた。
盗撮されていると知っていながらストリップみたいに服を脱いでいく真弓…。
言われるままに全裸を惜しげもなく晒し、盗撮…覗きの目の前で自慰行為を披露する真弓…。
自ら男性の精液を望み、欲しいと懇願することができる真弓…。
割れ目を開き、見せてはならない部分を奥まで晒すような真弓…。
どれもこれも頭を何か固いもので打ちつけられたかのようにクラクラする事ばかり。
『ホントに真弓はそんな事をしているのだろうか…。何か気に食わなくて、わざと当てつけのような話を重ね私を試しているだけではないだろうか…。』
そんな想いが芽生え始めたとき、近くに座っていた男性が席を立ち、店員に話している言葉に現実を思い知らされる。
『生臭い変な臭い…!?私は感じなかったけど…真弓が言ってること…ホントなんだ…。この子…ホントに汚されたパンティ…穿いてるんだ…。』
まるで状況を知らない他人が申し出たことで、真弓の話に信憑性が増し、まさか…と思いながらも聞いていたことも真の現実なのだと受け止めざるを得なくなった…。
『こんなに可愛いのに…女の子にしか見えないのに…。そんなにイヤらしい…いいえ…もはや変態的な事だよね…。そんな事を…この真弓が…。』
自分の方が大人の楽しみは知っていると思っていた、所謂上から目線が根底から覆される屈辱を味わった…。
『なんで…なんで真弓なの…。』
対抗意識がより強く感じられる瞬間だった。
そんなとき、例のメールが私のスマホに届くと…。
『やっぱり…昨日は真弓のところに…。』
あわよくば…そんな想いを見事に打ち砕かれた私。
しかしながらわたしの羞恥心を擽る言葉と画像に私の中の淫らが目覚めかけてしまう…。
『干してある下着…今日も見られちゃった…。それにこの画像…。またたくさんの人達に…私の下着が見られてる…。私の下着を見て…ニヤニヤしながら…写真まで…。』
きっと真弓もこうやって少しずつ罠に嵌められていったのだろう…。
そんな手口は理解していたとしても、一度開花してしまった淫らな花弁は更に妖艶な輝きを増すように咲き誇ろうとしていた…。
もう…帰らなきゃ…。帰って一人であの人が来るのを待たなきゃ…。
意識までコントロールされたかのように思い詰めた頃…真弓が最後の言葉を吐き出した…。
「一番…気心が…?そう…なんだ…下着を盗んだ人に言われたんだ…。全部バレる!?それって…真弓の恥ずかしい姿がバラされるって事…!?」
頭の中に淫らな自分の姿が近所や学校、周りの知り合いにリークされる恐怖が過る…。
『言うことをきけば…バラされたりしない…。でも…気分を損ねると…やっぱり危ない人なんだ…。』
犯人に対しての警戒心を増した言葉だった。
言われた通りにしなければと思わされる一言だった。
その夜…。改めて下着泥棒からメールが届く。
雨が降る…強い風が吹く…。
下着が干せない…。干してあれば…。
そんな言葉に、私だって楽しませたいのに…。そんな想いが強く沸き上がる。
下着を外に干していれば…楽しめる…。それは悪戯して下着を汚すことができると言う暗示。
結構な風雨…窓もガーデンも…。
天気が悪いから…私を気遣ってくれてるのだろうか…。卑劣な犯罪者だと言うのに、自分を気に掛けてもらえてると勘違いしたとしてもおかしくない文面。
その時、私は想いを固める…。
「今日は…私のところに来るって…言ってた…。
私だって真弓みたいなこと…。真弓よりも…もっと大胆なことだって…。天気なんて関係ない…。
私が…真弓よりも…楽しませないと…。」
既に彼氏を他の女に盗られたくないと…感じているのと同じ感覚が私の中に芽生えていたのかもしれない。
そう…今日、カフェで真弓の告白を聞いてしまったから…。
夜更け、窓を叩く風が少し強くなってきたような気がした。それでもベランダに干した下着を取り込むことはせず、風に踊らされた下着達はバタバタと靡いている。
しかも窓を開け、カーテンを少し開けて部屋の灯りはベランダを通り越して外の暗闇に光の筋を走らせる…。
幸いにも風向きなのかベランダの中に雨が吹き込む事はなく、風と雨の音が周りの僅かな音を掻き消すだけ…。
もう間もなく…明日に変わる…。
きっとベランダの近くに下着泥棒が潜んでいる…。
そんな確信めいた気持ちは、ただ単に願望だったのかもしれない。
僅かに開いたカーテンを更に大きく開き窓の外の悪天候を確認するような振りで覗くと、部屋の照明の真下に立ち、ゆっくりとワンピースの裾を持ち上げ始める…。
【ありがとうございます。
もう少し乱れてみたい気持ちと、今はまだ抑えておかなきゃと言う気持ち…入り乱れた不思議な感覚があります。
これは物語の中の京子の感覚そのものなんだと思います。】
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