ベランダに出て物干しに下着達を吊している私は、何故か淡々と作業をこなしていた。
ただ…下着を干しているだけのことだとしても、普通は一人暮らしの女が下着を外に干す事なんてあり得ない。悪戯されるまでは考えていなくとも、犯罪紛いの事に捲き込まれる可能性を自ら高めなくても…と言うのが理由だろうか…。
たかが下着。裸を晒しているわけではない。とは言え下着などと言うものは見られない努力をするもの。ブラウスの下に何かを重ねることで浮き上がらせてしまわないように…。
スカートの奥にしても、あえて見せようとしない限り見られる事はないだろう…。
人の目に触れる機会の少ない下着。それを私は今、自ら晒すようにベランダに吊している…。
「こんな事…何で私…。」
自分の行為を正当化するための呟き。自らの不注意とは言っても、秘められた行為を盗撮され、他人に晒されない為に指示に従っているだけ…。
そんな体を作りたかったのかもしれない。
ユラユラと風に踊らされる下着を見ると、まるで今の私そのもののように思えてくる。
ただ…言われるままに…抵抗することなく…踊らされる私…。
全て私の意思ではないとの言い訳。強要されて仕方なくと言うスタンスのため…。
しかしながら…本当は私の中に目覚め始めた被虐の性癖を認めたくないと言う想いがいちばん強かったのかもしれない…。
窓辺にへたり込み、窓の外に揺れる下着を眺めているとスマホがメールの着信を知らせた。
「えっ…もう…!?」
メールを開くと私が下着を吊り下げた事を確認したと思われるメールが届いた。
「もしかして…今近くに…!?」
慌てて窓ガラス越しに道路の方に視線を向けてみても、風に揺れる下着が邪魔をして確認することができない。
続きのメールを読み進めると貼付されていたファイルに気づき、そのデータを開いてみると…。
「イヤっ…みんなが見てる…!私の下着に注目してる…!やだっ…やめて…撮影なんて…。」
いいものを見つけたと言わんばかりの歪んだ笑みを浮かべた男性達が手にしたスマホをベランダに向けていた。中には偶然持ち合わせたのだろうか、高価なカメラの大砲のようなレンズを向けている人まで…。
思わず目を瞑りたくなるような画像。無意識に視線を背けたくなるような動画が画面に映しだされた…。
「イヤっ…こんなにたくさんの男の人に…私の下着が…。ブラも…パンティも…みんなに見られてるなんて…。」
下着を盗まれ悪戯された揚げ句、汚されたとは言っても、その男の表情は妄想の世界だけの話。
実際に見たことはない男の表情を目の当たりにすると、激しい羞恥に襲われた…。
「イヤぁ…見ないで…そんなにイヤらしい目で見ないで…!」
画面を閉じ、窓ガラス越しに道路の様子を窺う私の視界に風に揺れる下着の隙間から僅かに人の気配を感じられた。
「まだ見てる人が…まだ私のパンティが…。」
顔から火がでそうなほど赤く染めた頬が熱い。
顔を赤らめるほどの羞恥は、もれなく私の身体すらも熱く昂らせていく。
何故…私はこんな事になってしまったんだろう…。
送られてきた画像から目をそらすようにキツく瞼を閉じ、頭を抱えながらブルブルと振るわせながら考えていた。
あり得ない…こんな事…。
そんな想いは自分でも気づいている想いを隠したいだけのこと…。
友人への対抗心…あの子ができて私にできないはずはない…。
あの子はどんな悦びを知っているの…?
そんな対抗心や妬みや羨む気持ち…。そんなものが私の背中を押し、休息に淫らな花を開花させてしまったのかもしれない…。
それを隠し心の奥へと押し込むためには、下着泥棒と言う卑劣な相手からの言葉が一番有効だと考えた。私は何も悪くないと言うスタンスを維持するために…。
「私一人に時間を…?」
そんな言葉に何故か悦びが込み上げた。
ところが…。
こんなに恥ずかしい想いを堪えていると言うのに、今夜はここには近寄れないという文章。
その理由として具体的に語らないものの、その相手は友人の真弓だと言うことを察してしまう私。
「なんで…!?」
無意識にそんな言葉が口から飛び出した。
「真弓のところに行くから…私は放置って言うの…!?そんな…何故あの子なの…。」
恨み言を呟くほどに下着泥棒にのめりこんでいたのかもしれない。
もちろんそれを認めたくない気持ちは存在した。
「いいじゃない…これで今日はゆっくりと休めるんだし…。」
そんな言葉は単なる強がりだと言うことも理解していた。
そんな多重人格のような真逆の言葉を呟く自分自身がいったい何を望み、何を求めているのか…私自身でもハッキリとした答えは出せなかった。
その夜…被害は受けないという保証がありながらも何故か浮かない気持ちに包まれていた。
普段通りの生活。穏やかな時間が流れていながらも、どこかで寂しさの様な気持ちも確かに存在した。
寂しさ…退屈さ…浮かない気持ち…。
そしてメールにあった時間が近づくにつれて、心の中がザワザワと騒がしく震える感覚と、友人への嫉妬にも似た感覚に苛まれ、どうしても心穏やかでは過ごせそうもなかった。
「もうすぐだ…メールに書いてあった時間…。
今頃下着泥棒に命令された真弓は…ドキドキを膨らませてるのかな…。」
時を追う毎にいてもたってもいられないような心のざわめき。
その時を迎えると俯きながら心の中の荒く激しい渦巻きに耐えるように震えていたものの、ふと思いついたように立ち上がる。
「真弓が…そうしてるのなら…私も…。」
その指示内容通りならば外を見られない以上、そこに誰かの姿を確認することはできない。
だとしたら…。
「同じ事をして…妄想するのと同じ事…。」
カーテンを少し開くと暗闇だった外の世界を明るく照らす一筋の光が射す。
その光に照らされた色とりどりの下着が一気に輝き始めた。
スルスルと窓を開くと、未だに暑さを失わない生暖かい空気が部屋に入り込み、その熱を感知したエアコンが最大量の風を送り出し、その送風音によって外の僅かな音は聞き取れない状況と化した…。
「ホントなら…このベランダの向こうには…下着泥棒が…。私のパンティを物色して…生温かいままの精液を…。」
妄想の世界に浸り始めた私は、目を閉じ脳内に淫らな光景を思い浮かべ始める。
「あぁ…また…。また私のパンティが悪戯されて…イヤぁ…匂いなんて…ダメ…クロッチを舐めちゃいや…。」
窓辺に立ち目を閉じたまま妄想の世界の呟きを現実の言葉として漏らし始める。
妄想の中の光景に現実に呟いた言葉が聴覚を刺激して更に私を妄想の沼に引きずり込んでいく…。
「あぁ…また…また私…盗撮されちゃう…。カーテンを開けさせるなんて…盗撮…してるんだよね…。」
妄想の中に溺れ始めてしまった私は、スカートの上から股間を押さえていた指先が、スカートを手繰り寄せるように少しずつ…少しずつ…捲り上げていく。
ゆっくりと穏やかに晒されていく細く白い脚。
膝が見えたあとは太ももがチラチラと見え始め…。
「これ以上は…もう…これ以上捲り上げたら…パンティが…見られちゃう…。」
見て欲しいと言わんばかりにスカートを捲り上げる私。それでもそれを否定するような言葉を吐き出して、行動と言葉がちぐはぐな現実に翻弄される感覚を楽しむように、更に捲り上げられたスカートは、震える膝と共に深く切れ上がった尖った三角形のレースがあしらわれた黒い布が露わになる…。
「撮られてる…?私のパンティ…見えちゃってるよね…。また…私のイヤらしい姿…盗撮されちゃってるよね…。」
頭の中ではガーデンの隙間から盗撮されていることを意識しながら…恥ずかしい姿を晒す羞恥を楽しみ、望んでいるかのように窓際へと歩みを進めると、瞼は閉じたままカーテンを更に開き、下着のクロッチを横にずらして割れ目を直接愛撫し始める。
「あぁん…ダメ…こんなに恥ずかしい姿…見ないで…盗撮なんて…しないで…。
盗撮されてるって…わかってるのに私…止まらないの…指が…止まらないの…。」
妄想の中の私は今、この淫らな姿が盗撮されている。盗撮されているとわかっていても自らの意志で見せつけるように…見られたいと言う意志をハッキリと表すかのように大胆に…淫靡に股間を弄る指先の動きすら晒していく。
「あぁ…こんな…こんな事…盗撮されてるのに…恥ずかしいのに…ダメなの…指が…指が止まらないの…。グッショリ濡らしたパンティ…これを…また…汚されちゃう…男の人のアレが…精液がベットリついたパンティ…。」
その途端、指の動きは止まり一瞬身を固めたかと思うと、意を決したように今穿いている下着をスルスルと下ろし始める。
片足ずつ持ち上げて両脚から抜き取ると、ベランダの床にそっと置く。
【遅くなりました。温かい言葉、ありがとうございます。】
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