「…出てきた出てきた…。」
友人の相談を受けたことが、京子の中にある好奇心、秘められた欲望を刺激したのかもしれない。
それが始まり、真面目で周囲からの信頼も厚く、人気も上々の彼女。
そんな彼女の、何がそうさせたのか。
たった2日間の出来事、しかし彼女の人生の中でもこれほど現実から逃避したような2日間は数えるほどしかなかったかもしれない。
その日は朝から曇り空、どんよりとした雲が空を覆い快晴だった昨日と比べると少し薄暗い。
まるで京子の心中を表すかのように、今後の展開を指し示すかのように、文字通り雲行きが怪しい。
男にとってはありがたい状況。
いくら車内にいるとはいえ、照り付ける太陽が遠慮なく車内にその陽光を照らせば相応に汗ばむ。
それがないだけでも、天国のような状態だった。
男はメッセージを送って小一時間も経たないうちに京子宅の傍まで来ていた。
小腹を満たす程度の食事だけをさっと済ませ、くつろぐでもなくそのまま車に乗り込んでいた。
大胆な時間の使い方。
普段の仕事も決して楽なわけではない。
特に今年は例年を凌ぐ暑さだと連日ひっきりなしにニュースが流れている。
そんな炎天下、それを周囲の人間よりも高い位置で過ごすことも多い。
精神的、肉体的にも過酷な労働環境で日々を過ごしていてもなお、男が週末を、休日をのんびりと家で過ごすことはほとんどない。
まずは火遊び程度のアプローチ。
下着を盗み、そこへ自らの欲を吐き出し…返す。
そんな大胆な行動に直面してもなお、屋外に下着を干すという愚行がやまない女がいれば、本格的な行動を開始するのだ。
京子も例に漏れず、そして彼女がしきりに気にかけ始めた真弓という女も同様。
立て続いただけに勘違いしそうになるが、彼女たちは「稀」な存在であることを忘れてはいけない。
そもそも下着を外に干すなど言語道断、それが不運にも汚されて返ってくれば、「普通」は怖いし、気持ち悪い。
嫌悪感だけが心を満たし、下手をすればそれがトラウマとなり、大げさではなく2度と下着が屋外に姿を見せる事はなくなるだろう。
それが「普通」なのだ。
ほとんどの「女との出会い」は、そこで幕を下ろす。
というより、そこから下着がなくなってしまえば、男にはどうすることもできないし、それ以上の行為は百害あって一利なし。
ハイリスクローリターンどころか、ハイリスクノーリターンと言える。
つまり、京子や真弓との出会いはもはや奇跡に近いのだ。
そんな女たちとの「コミュニケーション」は、男の休日の過ごし方でも最も尊いもの。
一見無駄に休日を車内で過ごしているだけの時間も、男にとっては至福の時なのである。
そしてその褒められた行動ではないが、そのまめで細かいアプローチが余計に女たちを乱れさせる。
時は金なり、ASAP、クイックレスポンス。
あらゆる局面でしきりに言葉にされる時間の使い方、もとい、リアクションの速度感。
1日空けば冷静さを取り戻し、余裕が生まれる。助けを求めるという選択肢も生まれる。
そんな隙すら与えず、畳みかけるようにアプローチを続けることは、女たちから逃げ道を奪い、逃げようと考える意思を奪うことにつながる。
「一枚…二枚…、三枚…。
偉いじゃないか…、ちゃんと言われた通りに従っている…。邪魔なで余分な洗濯物もないな…。よしよし。」
そっと車内から双眼鏡を覗き込み、京子の行動を確認する。
僅かに確認できる京子の表情は複雑な物、只の嫌悪感…?そこに一抹の興奮もないのか…。
残念ながらその表情だけで全てを読み取る技術を男は持ち合わせていない。
それでもその行動は、男の思惑通りに進んでいることは事実。
周囲を気にしながら一枚ずつ丁寧に晒されていく、いや、自らの手でその羞恥行動を晒していくその姿に男の股間は熱くなる。
「はぁ…、はぁ…。
良い…良いじゃないか…、最高だね…竹本京子…。
煩わしい時間稼ぎをしてくる女もいたが、やはりレスポンスは早い方がいい。
イライラさせて機嫌を損ねるリスクに比べたら…、下着を晒すくらいどうということはないだろう…?」
さっと整えた身なり。
下半身は融通の利きやすい、ラフなパンツを履くようにしていればこういう展開もより楽しめる。
チャックを下ろし、ゆっくりと中の物を取り出すと、窮屈から解放されたように性欲の権化とも言えるモノが顔を出す。
ぬるっと滑り出る先端はぬめりを纏い、曇り空の中でひと際光って見える。
それを握りしめ、上下…上下…。
くち…くち…と、卑猥な水音をその車内で響かせながら、男は下着を掲げる京子を餌にその状況を楽しむ。
とろっとした透明な粒が、鈴口から溢れ、滴る。
それがまたカリ首停止すると、上下する手が持ち上げる皮膚の中で混ざり合い、絡まり合い、泡立っていく。
まるで、理性と本能が混ざりあい、より濃い何かに変貌していくように、その卑猥な肉棒の様相の変化は、京子のここ数日の心境に近いかもしれない。
カシャ…。
カシャ…。
自慰を楽しむもほどほどに、男はおもむろに被写体の中心を京子から外して何度もシャッターを切る。
その先には、京子が下着を干している姿に視線を注ぐ男たちの姿。
鮮やかな色合いの下着を恥ずかしげもなく、またそれだけを晒している女がいるのだ、気にならないわけがない。
遠慮がちに眺める若者。
連れ同士で指を指しながら、笑って話題にする者。
人目もはばからず、立ち止まって大胆に視線を送る中年など、その様子は様々だが、男はそれらをひたすらにスマホで写真に収めていく。
それは、京子が下着を干し終えてもなお続く。
当然、下着の持ち主とセットで確認することがさらに興奮させるのだろうが、臆病で卑怯な男たちは、持ち主がそばにいれば堪能できない。
遠慮がちに見つめていた男は、京子が姿を消せばそこへスマホを向けて撮影する。
写真…?いや、動画かもしれない。それほど、男というのは卑怯で情けない生き物なのだ。
別のカメラを用意すれば、スマホで写真…カメラで動画と器用に撮り分ける。
もちろんこれも後々の為、安息の時間を少しも与える気のない男は、京子が部屋の中へ消えたのを確認したタイミングでノートPCからメールソフトを起動する。
「素晴らしいですね…京子さん…。
こんなに早くリアクションを起こしてくれるなんて、思ってもいませんでした。
貴女は私の想像を超えてくれる…、これは貴女一人に時間を使う方が有意義に過ごせるのでしょうか。」
冒頭は、京子の行動の早さへの称賛。
そこへ続くのが、今や意図的ともとれる比較した言動。
「今夜は…、残念ながら貴女の近くまで行くことができないんです…本当に残念だ。
別の方との約束がありましてね…。
どうしても…、汚れた瞬間の下着が欲しい…と、言われまして…。
ですので今夜彼女には、決してベランダを覗かないこと、そしてカーテンを少しだけ開け、窓も少し開けて待つように言ってあるんです。」
男が続けたメッセージは京子への指示、ではなく、もう一人の女への指示の様だった。
「本当に申し訳なく思っています…、いや、貴女にとってはもちろん「その方がいい」でしょうけど…。
ですので、今日はお休みいただいて結構ですよ…。深夜0時前後…、残念ながら私は別の場所にいる。」
わざと、時間まで明示。
自分以外の対象への気持ちを探るような…、試すような男の行動。
「また…ご連絡させていただきますね…。
お詫びと言っては何ですが、ささやかなプレゼントです…、貴女がいかに魅力的な女性かを象徴する良い写真だと…思いませんか…?」
添付したのは先ほど撮った写真…そして動画。
京子の下着に熱い視線を送る男達、もしかしたら干している最中は気づいていたかもしれない。
だからこその動画の追加…、そこには京子がその場を後にしてから、倍…多いときは3倍くらいの観客がその下着を楽しんでいるかのようなシーンがはっきりと映っていた。
…
……
カーテンを少しだけ開け、窓を少し開ける…午前0時…の少し前。
決してベランダを覗かないこと…、を守ってしまえば…、気づくことができない完全に中を覗くカメラが設置されている。
【頻度のことはお気になさらず、私も日に1回は更新したいと思っていますが、やはり仕事等で返せないときもありますので。
それに、つらつらと書き終えたものが消えてしまうショックは凄くよくわかります。
それが怖くて私は一度、メモ帳に描いたものを張るようにしているくらいですので。
自分が書いたはずなのに、消えるともう一度は書けないの…ほんと、何なんでしょうね。
そして、一度見た物語の再放送を見るような感覚になり、描写がどうしても初回程詳細に描けなくなってしまう。
大変な文章量をいつも楽しく読ませていただいています。
ただ、負担に思われては本来の、楽しむ、ということができなくなってしまいますから、くれぐれも無理はされないよう。
貴重なお相手だと感じています、許される限りお時間を頂戴したいと思っていますので。】
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