「…ふっ、やはり気づかなかったようだな…。」
昨夜と違うのは、男はすぐにその場から遠くへと離れなかったこと。
もちろん、ベランダからは死角になる位置、しかし自分からはベランダの様子がある程度は見える位置。
パキンッ。
京子が耳にした枝が折れた音は空耳ではなく、男がわざと鳴らした音だった。
持ち帰らず、リスクを犯しながらもその場で堪能し、果て、汚した下着をその場に吊るしなおしてその場を離れた。
その行動にはもちろん、意味があった。
「…。」
枝が折れる際に響いた音は、はっきりと京子の耳に届いたようだった。
その音からインターバルは数秒程度、カーテンは開き、ベランダの窓が開かれる。
遮光性の高いカーテンだったことは、そのインターバルの短さで想像がついた。
音に気付き、電気をつけてから窓を開けたのであれば、あれほど早く顔を見せる事はないだろう。
「…。」
ベランダは南向き、朝日や夕日が強く室内に差し込むことはあまりないだろう。
にもかかわらず、中の明かりが一切漏れないほどの遮光カーテンを使用していることに、用心深さも同時に感じていた。
少しずつ見えてくる、竹本京子という女の人物像。
「…。」
そんな京子が下着の変化に気づき…驚いた様子。
想像通り…想定通り…。
「…。」
しかし、男にとっての想定外は、開け放ったベランダ脇で京子がそのまま事に耽ってしまったこと。
もちろん、嬉しい誤算。
京子は男の想像の一回りも、二回りも淫らで、惨めな性癖を露呈していた。
「…、終わったみたいだな…。」
男はすっと耳に据えたイヤホンから指を離す。
京子がベランダに姿を見せてから十数分程の時間。
暗がりの中からスマホをベランダに向けて、撮影。
しかし残念ながら、肉眼で確認していた内容程鮮明に撮影はできていなかった。
「さすがにこの暗がりじゃ厳しいか…。まぁいい…こっちの方が今回は良い土産になったぜ…京子さんよ…。」
イヤホンから伸びるケーブルがつながる先、ポケットの中に忍ばせた藻場入りバッテリーのような黒い塊。
そこへ手を伸ばすと、スイッチのようなものをOFFにすると、そのまま脱力しその場にへたり込む京子に背を向け、その場を後にした。
帰宅後すぐにPCのある部屋へと向かうと、スマートフォン、そしてポケットに入れていたモバイルバッテリーのようなものを接続する。
「やっぱり動画の方は厳しいな…。
まぁ、これはこれで臨場感があっていいか…。」
モニターに映し出されたのは先ほどスマホで撮影した動画。
カーテンが開いた瞬間から撮影は始まっている。
内容的にはベランダに向いて悶え、喘ぎ、よがる瞬間が映っている動画ではあるが、手前が暗く後ろの部屋明かりが逆光になり、言われないと何をしているかわからないレベルの動画になってしまっていた。
「想定内だ…、雰囲気だけもわかればそれで…。しかしこっちは上々だな…、くくっ。」
接続されたモバイルバッテリー内のファイルには音声データが一つ記録されていた。
ダブルクリックし、その音声データを再生すると…。
---
「この…汚れたパンティ…普通じゃないほどに濡らしちゃったパンティ…男の人に…悪戯されて…最後に…タップリ…汚していって…くれたんだ…。」
・
・
・
「ダメっ…私…犯されてるみたい…生で…中には出されて…お口で掃除…させられて…。
あぁ…やめて…犯しちゃいや…そんなに奥に…出しちゃダメ…。」
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そう、流れるのは京子の、決して誰にも聞かれてはいけない音声。
それもただの自慰中の音声、いわゆるオナ声ではない。
明らかに誰かもわからない人間に汚された下着、その下着に付着した精液に興奮、欲情し喘ぎを漏らす音声。
最後は消え入りそうな声で、犯される妄想までを口にし崩れ落ちる音までが入って終了になっていた。
「しかしここまでの変態とは思わなかったな…。
今までにも盗まれた下着に付着した精液、欲情する女はいたが…。
何度も盗み、返し、盗みを繰り返した後の話…そういや、その女の家も近くだったな…。
確か年齢も似たようなものじゃなかったか…。
まぁいい、俺も一度に何人も遊んでやるほど暇じゃない。
より楽しめる女で楽しむだけの話しさ…。」
気になる言葉を口にする男。
しかし、そんなことを京子が知ることはない。
男はそのままPC上でメモツールを開くと、徐に文字の入力を開始する。
<想像以上に悦んでいただけたようですね、貴女ほどの反応を見せてくれる女性はそうはいない。
先日も一人、良い反応を見せてくれる方はいたんですがね…。それでも、貴女ほど「早く」はなかった。
お味はいかがでしたか…?
好みもあるでしょうからね…、長いお付き合いになりそうだ…それなら臭いも…味も…貴女好みの方がいいでしょう。
しかしそればかりは相性だ…、早々都合よくはいきませんね。
無駄話はこれぐらいにして、約束通りプレゼントを差し上げます。
PCでもスマホでも、お好きなものでお聞きになってください。
これが本当の貴女の姿…ということなのでしょうね…?
ぜひ感想を聞かせてくださいね。
それと…、もし感想が聞けなかった場合…、同じものを貴女のマンションの各階、各部屋にお届けすることになってしまいます。
くれぐれも忘れないでくださいね…?>
メッセージの最後には完全にフリーのメールアドレスが記載されている。
脅しともいえる文句を最後に添えてはいたものの、必要ないと思っていた。
この数日で急速な反応を見せた女が、無視するなどあり得ないと踏んだからだ。
「まぁ、脅されて仕方なく応えるしかないんだ…、なんて従う理由を作ってあげた方が…ね。優しいな…俺は。」
京子の性格を知ってか知らずか、保険にすら考えてもいない脅し文句にはそんな意図を乗せていた。
後は如何に早いレスポンスがくるか、どんな内容なのか…そこが楽しみではある。
翌朝、京子にも見覚えのある封筒に印刷したメッセージ、そして音声データの入ったメモリーカードを入れてドアポストに投函。
インターホンを鳴らすだけ鳴らして、男はその場から足早に去っていった。
【お返事遅くなりました。
初回から変わらず魅力的な描写を頂きとても楽しませていただいてます。
始まったばかりではありますが、より長くお付き合いいただければと思っておりますので、現時点で感じているやりづらさなどあればおっしゃっていただけると修正していきますのでよろしくお願いいたします。
また、まだまだ手探りで展開している部分もありますので、展開先にご希望とかあれば先々で盛り込めればと思っておりますので合わせてお知らせいただければと思います。
宜しくお願いいたします。】
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