「今夜こそ…どこの誰なのか突きとめてみせる…。」
その言葉は使用済みの恥ずかしい下着をベランダに吊り下げる破廉恥な行為を自分自身の中で正当化するための言葉。
そう…あの汚れたままの下着は卑劣な下着泥棒を誘き寄せるための甘い罠…。
そうすることで自分の行いが正当化され、被害者である事を演じ続ける事ができる。
自らの欲望を自身で否定しながら欲望に背中を押された行動が可能になるはず…。
その想いが私の行動を更に大胆に変えていくかもしれない懸念はもちろんあった。
それでも被害者を装い、悲劇のヒロインに憧れる被虐心すらも私の中に芽生え始めていたのかもしれない。
カーテンを閉ざして部屋の灯りを落とす。薄暗い部屋の中、遮光性に優れたカーテンは部屋の灯りを漏らさない代わりに、外の世界と隔てる能力も高く、そこに何があるのか、誰がいるのかすらも判別する事はできなかった。
ほんの少しだけ隙間を空けておけば…もちろんそんな想いもあったものの、ここで窃盗犯とはち合わせる事は恐怖…いや…この先の楽しみが奪われてしまうような気がしていたのかもしれない。
ほんの僅かな変化も感じられるように、五感を研ぎ澄ませていたはずだった。
まさに蟻の足音すら聞き逃すまいと意識の全ては窓の外側に向けていたはず…だった。
小さな細い枝を踏むような音が私の鼓膜を揺らす。
慌ててカーテンを開き窓を開いたものの辺りに人の気配は無い。
「えっ…空耳だったのかな…。」
確かに聞こえた…。それがすぐそこのベランダで聞こえたようでもあり、マンションの敷地の生垣近くで発せられたようにも感じる不確かな物音…。
「何だったんだろう…。」
そう呟き異変がない事を確認し終えた私は部屋に戻ろうとした瞬間、生暖かい南風が私の鼻腔に意識を惑わす香りを届けてくる…。
「えっ…!?何…!?」
それは先程まで楽しんでいた汚された下着から発せられる淫靡な香りと同じように思えた。
部屋の中からではなく、外からベランダを通り抜け部屋の中に吹き込む風に乗って…。
「下着の数は…干したままの数だし…。例のパンティは…。」
他の衣類に囲まれるように干されていた汚れたままの下着に手を伸ばそうとした瞬間…私の視界に何かが滴る様が飛び込んできた。
「えっ…。」
床に垂れ落ちるそれは、白く濁り粘り気が強いもののように糸を引きながら放射状に飛び散っている。
「えっ…まさか…!?」
干したままの姿で汚されて返される事は考えても居なかった。
干したままに汚されたのは…一度持ち出して戻しに来る二度の侵入を音もなくこなしたのか…。
それとも…この場で淫らな行為に及んだ結果を示していったのか…。
思わず例の下着に手を伸ばすと、僅かに温かみの残る粘り気が私の指先に纏わり付く。
「うそっ…まだ少し…温かい…!?そんな…今しがた…まで…ここに…誰かが…!?」
自室のベランダ内に侵入した何者かが、干してある下着を物色して事もあろうにこの場で射精して帰ったのかと思うと、昂ぶりが込み上げてくる。
それをおかしい感覚と捉えるまともな自制心はどこかに吹き飛んでしまったのだろうか…。
誰かが侵入し、下着を物色してこの場で下着に精液を放って帰るなど、本来なら恐怖でしかないはず…。
それなのに私は…そこに添えられていたメモの言葉のように楽しんでしまっていたのかもしれない…。
「ここで…誰かもわからない男の人が…私の汚れたままのパンティに…精液を…。」
妄想が現実を掻き消しそうなほどに浸蝕し、頭の中にはベランダで人知れず欲望を放つ男性の姿が思い浮かぶ…。
「この…汚れたパンティ…普通じゃないほどに濡らしちゃったパンティ…男の人に…悪戯されて…最後に…タップリ…汚していって…くれたんだ…。」
クロッチとは言わずどこもかしこも精液まみれのような下着を手に部屋に入ると、何も躊躇うことなく汚された下着を鼻先へと運び、その滑りの中に鼻を埋めるかのように淫靡な香りで包み込む…。
「あぁ…なんてイヤらしい匂いなの…?男の人の精液の香りと…私が濡らした女の香り…。
交ざり合った香りは…あの時の香り…生でセックスしたあとに…お口で掃除させられる時の香り…。」
過去に付き合った男達から教え込まれた行為を思い起こし、当時は嫌悪を感じていたはずの行為が、何故か恋しく思えてしまう…。
「あぁ…精液と…私の蜜が交ざり合った香り…。
お掃除するときと…同じ香り…。」
頭の中に過去の男達とのその時の光景が思い浮かび、汚されたばかりの生温かい粘り気を保つクロッチ部分に舌先を這わせてしまうと…。
「あぁ…苦い…。やっぱり…コレは精液…。誰が出したかもわからない精液を…あぁ私…私の蜜と一緒に…舐めちゃってる…。」
窓辺に立ったまま指先に精液を纏ったままスカートの中に忍ばせていくと、下着を掻き分けるように横にずらして、既に涎を垂らさんばかりの割れ目の上から擦りつけるように…。
「あぁ…いやっ…私のアソコに…精液が…。ああぁ…誰のものかもわからないのに…。あぁ…ダメっ…指入れちゃったら…精液も…入っちゃ…あぁ…入っちゃった…精液がベットリと着いた指…オマンコに…入っちゃった…。」
指先に纏った精液もろとも割れ目の中に深く沈み込ませてしまう。
そこから取り出した指を愛しそうに舐めあげ上げると、再び精液を纏って割れ目の奥深くへ…。
「ダメっ…私…犯されてるみたい…生で…中には出されて…お口で掃除…させられて…。
あぁ…やめて…犯しちゃいや…そんなに奥に…出しちゃダメ…。」
妄想の中で犯される姿を思い描きながら、立ったままの自慰行為はあっという間に果て、その場へ力なく崩れ落ちた…。
少しだけ冷静になった私は、改めてメモ紙に視線を落とし、名前すら流出してしまった事に驚き、もう逃れられないところまで堕ちている事を覚る…。
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