「どういうつもり…か…確かにな…。
俺も、由香里の娘がお前じゃなきゃ…、もう少し真っすぐだったかもしれないが…。
結局は同じこと…。一人か…二人かだけの話…。」
意味深な物言い。
パパ活をしていたころの愛美と同じような扱いを、もし由香里にも近しい形でアプローチしている、というのなら、愛美は暗に母親がただただ弄ばれているだけだという事実を知ったことになる。
そして、男は愛美がそれを理解したことさえ想定している。
「困ったねぇ…。
ママに言うかい…?その人は、ママで遊んでいるだけ…。
えっちなことがしたいだけなんだよ…遊ばれてるよって…声を大にして言うかい?」
完全に優勢。
愛美が過去のパパ活の事実をいかに知られたくないかでこの形勢は確定する。
バレてももう過去は過去だと割り切ってしまえば、どうということはないのに、今の愛美にとっては黒歴史。
ましてや、女手一つで頑張ってくれている母親をがっかりさせることなどできるはずもない。
それがわかっているからこその言い回しだった。
「わかるか…?
今までは二人だけの家だった…。
寝室も…トイレも…風呂も…全部、全部…。
そこに邪魔者が入ってくるんだ…、さぞ過ごしやすくなるだろうな…?」
周囲を見回せばわかる、女だけの空間だった事実。
リビングに通される前に通った洗面所には、洗濯前で乱雑に脱ぎ捨てられた衣服…当然下着も隠すように等置かれていない。
それどころか、下着泥棒や盗撮回避のための部屋干しの下着が当たり前のようにリビングに干されている。
そんなまるで無防備…、裸を晒すような感覚の家の中に、天敵ともいえる男が単身乗り込んでいるのだ。
「俺たちは家族になろうとしているんだよ、愛美…。
家族ってのは仲良く…助け合って生きていくもんだ…そうだろう…?
仲良くしようじゃないか…なぁ?」
きゅっと抱き寄せるように背に手を回し、身体を寄せる。
スカートから伸びる太ももを撫でながら、今にもスカートの中へと進みそうな指先。
しかし、それ以上は由香里からの夕食の準備ができたという声で止まった。
そして歪な家族の形が始まる。
愛美の望まない…、3人での初の夜。
少しずつ夜は更けていこうとしている。
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