「そんな、俺は…俺は…だって…俺は…。
だって…先輩があんなに…。」
不意に握らされた黒いブラジャー。
ついさっきまでは眼前で横たわって気を失っている花崎の胸元を、その柔らかい膨らみを覆っていたもの。
さすがに人肌のぬくもりのようなものは残っていない、しかし、密着していたのだろう。
内側が少し汗で締まっている感覚を指先に覚える。
下衆が、共犯者を作るように不敵な笑みと要所に高圧的な罵声を織り交ぜて襲い掛かってくる。
怖い…、でも、助けたい…でも、逆らうのはもっと怖い…。
小心な斎藤には、恩人とも言える花崎を救うという選択よりも、今まさに目の前にある恐怖から逃げ出したい、その感情が勝ってしまう。
「んく…、は…は…。」
諦めか…、それとも最後まで「させられたから仕方ない」感を残したいのか、しかめっ面のままブラの内側を顔に押さえつける。
指先に感じていた花崎の汗の香り…少しの湿り気を顔全体で感じている。
呼吸しないわけにはいかない…、口で…鼻で呼吸するたびに、花崎の下着を良いようにしている汗本とと同様の行為に身を委ねてしまっていることを自覚せざるを得ない。
(先輩の…汗の匂いがする…。
あんなに必死に働いて…流す汗なのに…、臭くない…。
先輩の…匂い…。
ここに、先輩のおっぱいが…あった…のか…。おっぱいが…。)
強いられた状況…、しかし、幸か不幸かカップサイズのブラが表情を隠すほどに斎藤の顔を覆ってしまったことで、花崎への欲求が脳裏を過ってしまう。
(先輩…花崎…先輩…のおっぱい…ブラジャー…良い匂い…。
ダメだ…俺が、守らないと…いや、助けないと…でも、部長も…課長も…。触れって…おっぱいを揉めって…。)
都合の良い思考の変化。
下衆な上司二人は、煽りはするものの…ブラこそ押し付けてはきたものの、触れ…と命じてはいなかった。
堪能する自分たちの姿を見せつけることで、引き込むように…、陰湿な誘導。
「は、は…ん、く…。」
ブラで顔を覆いながら、気を失った全裸の女の身体に手を伸ばす。
もはやそれは、汗本や禿田達と大差のない行為。
いっそ、放尿飲尿を強制した筋山の方がまだましと言えるほどに。
「あ…。」
漏れる吐息。
その指先が、柔らかくそれでいて張りのある、しかし少し汗ばみ滑らかに誘い込むようなその感触を、強制ではなく斎藤の意志で感じてしまう。
(お…っぱい…に、触っている…。)
行動を自覚することが如何に危険なことか。
強制されたとはいえ、ブラで顔が半分隠れていることが罪悪感の一部をどこかへ隠してしまったかのよう。
(ダメだ…ダメなのに…止まらない…指が…手が…先輩…先輩…助けてください…。)
「助け…。」
触れた指先は離れなかった。
それどころか人差し指…中指…薬指…、と、本数は瞬く間に増え、先端で少しつんと存在感を放つ小突起に触れるのにそう時間はかからなかった。
最悪なことに、今まさに無防備で意識のない身体に触れているまさにその女に助けを求めながら。
「くくっ、これでこの男も終わりですね…。部長…。」
「あぁ…、我々と同類…、いや、それ以下かもしれんな…。」
黙ったままのその様子を見つめる禿田、汗本、そのスマホには齋藤の行為がしっかりと収められている。
【いえ、花崎さん自身はらしさをそのままに。
私が意識を変換していけばいいだけの事ですから。
貴女がやりたいイメを曲げてはダメです。
私が叶えたいのは何より貴女が濡れるイメを描くことです。
描きたいものを描く、欲しい物を欲しがってください。
貴女に、私が頑張って合わせます。合わせたいから。】
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