必要以上の接触は、既にセクハラの域を逸脱し、痴漢行為、強姦にも近しいレベル。
それが一人二人ではなく、大人数に囲まれた席のど真ん中で行われるのだから質が悪い。
謝罪、罰、そんな偽りだらけの背景がなければただのストリップショーに他ならない。
しかし、触れられている本人から飛び出る言葉は、「触らないで」ではなく「押さないで」という言葉。
セクハラ、痴漢行為への抵抗の言葉、というよりもぎりぎりの中で何かに必死に耐えようとしているようにしか感じられない。
その反応から近くにいる禿田、汗本、そして洞察力だけはひと際の筋山は、想像していたことがほぼ間違いないことを確信させるに至る。
「…。」
促されるまま、反射的に飲むという言葉を吐きだしてしまった花崎。
はっとしながら、さらにその動揺の色は濃くなる。
助けを求める眼差しを向けられるのは唯一斎藤だけ、しかしその当人は。
(すいません、先輩…すいません…すいません、助けたいけど…。怖くて…。
それに…俺…。)
一瞬絡む視線。
しかし、あろうことかその視線を斎藤はそらしてしまう。
変わらず前かがみのような姿勢で、どこか股間を押さえているようにも見える。
そう…、辱めに合っている先輩。原因は自分にもある。
にもかかわらず、そんな先輩、花崎の全裸を見て…勃起…してしまっているのだ。
その罪悪感から、口をつぐみ、視線をそらし…、裏切りともいえる行動を取ってしまっていた。
「お、乳首見えたぜ…。」
「なんか勃起してね…?見られて興奮しちゃったとか…?」
極限状態で尿意に耐える最中、悪寒のようなものが全身を貫けば、柔らかい膨らみの先端では淡い桃色の突起が確かに固く尖っていた。
今にもその先端に触れそうなほどに、距離を詰める禿田、汗本だったが、そこは愛嬌とばかりにうまくスルー。
「ほら、これでちょっと楽になりなよ…。」
半ば強引に追加の酒を押し付けられる状態。
朦朧としている意識の中か、もはや誰の言葉がどうアプローチしてきているのか、隣にいるのが誰なのか…。
そんなことさえはっきりしない状態にまで追い込まれていく。
状況など…言葉など選んでいられないと見たか、連呼連呼のトイレ宣言。
するとそこへ帰ってきた筋山、にやりと笑みを浮かべながら取り巻きを割いて割って入ると
「ったくしゃあねぇな…。
そのままトイレまで行くわけにもいかねぇだろ…?
ほら…よっ。」
ガン、という物音と共にテーブルのど真ん中に置かれるのはビールの大ジョッキ。
「これにしろよ…限界なんだろ…?
最後の一滴が出尽くすまで、見ててやるからよ…?
転びたくないなら、肩なら貸すぜ…?ぞの代わり、何にも隠せないけどな…?
隠したいなら隠せばいいさ…その代わり、酔っぱらった転んだ挙句、しょんべんをまき散らした…なんてことになっても良いんならな…?」
あえて不安定なところに置かれたジョッキ。
ジョッキを倒してはいけないのはもちろんだが、出し切るまで自らの体勢を崩せない、というのも今の花崎にとっては少しハードルが高い。
「黙ってやるならさっさとやれ、手は貸さん…。
その代わり助けてほしいならはっきりと言え、おしっこをしたいので手伝ってください。見ててください…ってな。
くくっ、はははっ。」
ざわつく周囲、禿田、汗本…。
筋山がこれほど饒舌に言葉を発することなど今まであまりなかったのだ。
そこへの驚きも大きく、そして遅れて興奮の溢れる周囲が色めき立った。
「早くしろよ、しょんべん…。漏れちまうぞ?」
「花崎のしょんべんかぁ…、やっぱ臭いの…?臭っちゃう…?」
「バカお前、黙ってみてろって…しょんべんは色が重要なんだよ…。」
下衆…、下衆…。
男どころか、人間の風上にもおけないような発言が常態化。
「それとも…全裸で…廊下の向こうのトイレまで…全裸で…走っていくか…?全裸で…トイレでしょんべんするか…?あぁ?」
ふんぞり返りながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべる筋山。
そして、逃げるように視線をそらした斎藤は再び、花崎へと視線を向けていた。
【斎藤の立ち位置がある程度確立というか見えたのは大きいです。
どう立ち回っていけばいいのかが見えると書きやすいというのもありますので。
どうしてもやりたいことは、もちろんです。
ただ、違う流れになり始めたな…と感じたらそれはすぐに教えて欲しいです。そっちの修正の方が大事だと思うので。ジョッキ放尿、飲尿の件はお任せくださいね。
進め方に関しては承知しました。
仰る通りだと思うので、交互に引いて進めていくように意識しますね。
最後の謝罪の部分に関しては、ワンクッション入れて正解だったようですね。
良かったです。
ちょっとだけ挟んだ意図とか、そこで終わらせた意図、みたいなものを考えてしまうたちなので。
いろいろ描いてくださってありがとうございます。
とても楽しいです。】
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