「いいのいいの、斎藤くんは気にしなくてさ。そもそも契約書とかちゃんとチェックできてなかった私の責任だし。せっかく契約取り付けたのに、ケチつけちゃって本当ごめんね。」
斎藤がミスを犯した契約も、自分の成績を少しでも上げようと、ちょっと任せきりにしてしまった部分があった。
そのせいで、チェックが漏れていたこともあり、単純な数値ミスとはいえ、花崎の性格からして、完全に斎藤のせいにもできない。
「あははっ、その気持ちだけで十分だよ。とりあえず、お昼食べて飲み会のことは忘れちゃおっか。景気付けにお寿司でも奢ってあげるからさ」
自分のために憤ってくれる斎藤に優しく微笑みつつ、腕を引いてこっそり社外に出る。
二人揃って外出するところを見られると、「またサボりか」「ホテルで教育でもしてのか?」と悪口が飛んでくるためだ。
花崎はもう飲み会のことはなるべく考えず、自己の契約はさておいて、斎藤の契約本数を伸ばすことにした。
…
……
「…ねえ、なんで私トイレ行ってる間にこんなに仕事振られてるわけー…?」
今日は飲み会当日。
強制参加であるため、各々午後は基本的に簡単な仕事のみ行う。御多分に洩れず花崎達も軽い書類整理や取引先面談のフィードバックを行なって定時に終わるつもりだったが、花崎がトイレに行っている間に、大量の仕事を任せられた…、もとい押し付けられて右往左往している斎藤がいた。
ゲンナリとした表情を浮かべつつ、机に広がる書類に手をつける。「ごめんなさい…」と間に受けて謝る斎藤の頭を軽く撫でつつ、
「嘘嘘、冗談だって。それより、こっちこそごめんね…。ほら、私職場で浮いてるというか、孤立してるし…、それが先輩になったからには、こういうとばっちりもあるよねえ…。」
花崎からすれば、自分のことで斎藤を巻き込んでしまっている感覚だった。
昨年まで妹のように可愛がっていた同期の結衣ちゃん。小柄で愛嬌のあるタイプで、本当に可愛らしかった。
しかし、ここでは狼の群れに混じる子羊であり、目を離すとセクハラされたり、嫌がらせを受けていたため、何度も間に入っては守ってきたのだった。
(結衣ちゃんどうしてるかな…。少なくともここよりかはいいところで働けてると思うけど)
仕事を押し付けておきながら、偉そうにノシノシ退社する男達を睨みつけつつ、嫌味なセリフにも無言で対応する。
「遅れんなよ」というくせに、明らかに終わらない量を与えてきている。
しかし、放って飲み会に向かえば、明日大きなトラブルが待っていること間違いない。
「はあ…、あとはえーっと…?コピーして、ホチキス留め…、30組み…!?終わるわけないじゃんこんなのー…、ねえー…。」
預けられた仕事はほぼ単純作業。
どう考えても今日やらなきゃいけないことではないが、やらなければ槍玉に挙げられるのは、任せられた斎藤。
ぶつぶつ二人で愚痴を言いつつ、ちょっとふざけ合いつつ、仕事を片付けていく。
「ねえ、斎藤くんってさ、彼女とかいるの?…えー、意外っ。結構モテそうなのに。からかってるわけじゃないって!真面目で優しくて好青年じゃん、女の子は放っとかないって。」
ぱちっぱちっとホチキスを綴じる音だけがオフィスに響く。時計の針は飲み会開始時間を指していた。
「ん?私?…彼氏いないよー。こんな職場じゃ出会いもなければ、出会いに行く時間もないって。」
告白されたことは何度もあるが、その度にあんまりピンと来ることがなかった。
雑談の流れでお互いの恋愛事情に触れてしまい、ちょっとだけ気まずい空気が流れる。
「もう間に合わないね…。ねえ、飲み会バックれちゃってさ、ウチで二人で飲む?」
クスクス笑って隣に座る斎藤を見つめる。
少し顔を赤らめて狼狽えた彼を見て、あははっと破顔し、ゆっくり首を振る。
「本当にそうできたらいいんだけどね、そっちの方が1000倍楽しいしね。…けどまあ、行かなきゃまずいことになるだろうし…。急いで行こっか。」
ここで抜けて、二人で花崎の家に行けたらどんなに幸せだったか。
ここが最後の引き返せるポイントだった。
そうとも知らず、オフィスの電気を落としたり、施錠して着々と退勤の準備を進める二人。
会場の居酒屋に近づくにつれ、少し焦りを感じ、全身が汗ばんでくる。
それは決して、蒸し暑い外気のせいだけでは無かった。
(予定より30分遅れか…。もうだいぶお酒飲んで出来上がってるんだろうなあ…。…あー、絶対トラブルになる…、最悪…。)
ただでさえ二ヶ月連続成績最下位という弱みを抱えた中、30分の遅刻はあまりにも重い。
会場の小料理屋に着くと、すでに奥の方からワイワイ騒ぐ耳障りな声が聞こえる。
「…私が遅れてすみません的なこと言うから、ごめんだけど、斎藤くんも頭下げてちょうだい。二次会とか多分あるけどさ、どうせ三、四時間の我慢だから。…終わったらさ、本当にウチ来て飲み直してもいいし、ね?」
パンプスを脱いで靴箱に入れ、廊下を早歩きで進みながらコソコソ笑い合う。
斎藤と飲み直すという楽しみがあるなら、このつまらない飲み会もきっと乗り切れる、はず。
そう思いながら、襖を開ける。
(ぅ…、コイツら完全に飲んでる…。…、我慢、我慢…。)
襖を開けた先には、すでに空になったビール瓶や酒が入って顔の赤い男性達がいた。
酔って上機嫌な声が漏れていたものの、スッと無表情で花崎達を見つめている。
「…っ、花崎、斎藤2名、到着しました。遅れて申し訳ありませんでした…っ!」
パンツスーツの前で手を組み、90度折り曲げて頭を下げる。パーマがかかった髪が垂れ、うなじが顔を出した。
それとほぼ同時に斎藤も頭を下げ、二人の地獄の時間が始まった。
【素敵なレス、ありがとうございます。こちらのイメージした通りの、嫌な男性社員達ですね。
斎藤さんの体型や容姿は、よろしかったら中肉中背、それなりに整った顔立ち、が好きかもです。
他諸先輩方については、さまざまな方がいると思いますが、
・筋肉質でマッチョな体育会系
・小太りで汗かきなおっさん
・ハゲたおっさん
などなどがいらっしゃったら嬉しいです。
飲み会の内容のリクエスト…でもないのですが、どこかでお酒を次々に飲ませられるシーンがあると嬉しいです。序盤でもいいですし、後半でも構いません。
急アル症状を起こすも放置され、慌てた斎藤くんに介抱されるも、目を覚ましたら覚ましたで…みたいな。
ちなみに花崎の男性経験についてはどういったのが好みでしょうか?
処女の場合・・・告白されて、何度かお付き合いしたことがあるものの、性行為に嫌悪感があり、相手を好きになることがよくわからず、別れるを繰り返した。
非処女の場合・・・高校時代に一人、大学時代に一人、お付き合いをした相手がいる。大学の頃は同棲もしていたが、浮気が発覚して別れた。それから男性に対して不信感を抱くようになる。
とかだとどちらがお好みでしょう?
(もちろんそれ以外の過去などお好み要素があったら教えてください)】
※元投稿はこちら >>