「やっぱり馬鹿にしてるんだろう…」
その吉田の冷たい小さな声にメイは土下座をする…必死になり許しを請い頭を床に擦りつけるように…
何をされても今の吉田には所詮奴隷の作法としか映らず、頭を擦りつけるメイから目を逸した。
それでもメイは謝罪の言葉を何度も繰り返した。
「もういいつ…!…そんな台詞っ…聞きたくな…」
繰り返される謝罪の言葉に苛立ちメイを睨み怒鳴りかけ吉田は言葉を詰まらせた。
怒鳴り声に顔を上げたメイは、大きな瞳からボロポロポロと大粒の涙を溢れさせていた。
ここ「ソナ」て客から受ける仕打ちは酷いものだとメイから聞いて多少なりとも知っている…ときには涙を流すほどの苦痛さえ受けることもあるに違いない…
逆を言えば、多少の痛みも我慢する事を余儀なくされただろう…
誕生日祝いだと身体に蝋燭を立てられ、火傷ができるのを我慢するような…
そんなメイが顔をグチャグチャになるほど大粒の涙を流していたのだ。
その涙を見て頭に登った血がすうっと下がる気がした。
なぜ自分は、メイに会いに来たのか…しがないサラリーマンが身分不相応の高い金を払ってまで…
メイは、自分のどんなくだらない話にも真剣に耳を傾け、喜んでくれてり泣いてくれたり怒ってくれたり…素の自分を受け入れてくれたのがメイだ。
「……っきは…さっきは何で話を逸したの?」
吉田は一瞬メイが見せた表情の事を聞いた時の事を問いただした…メイが吉田を気遣い本当の事を言わなかった事を…
「そ、そんなこと…そんなことを気にして?」
メイは泣きながらボソボソと話を逸した理由を口にする…客から受けた仕打ちは相変わらず聞いてはいられないものだったが、その仕打ちを受けた理由に吉田は言葉を失った。
(本当の理由を知ったら…俺が気にすると思ったから?そんなに俺の事を考えてくれて…)
吉田はメイに近づき床に膝をつきメイをギュッと抱きしめた。
殴られる…と思ったのか、吉田が近づいた時、反射的に身体を引いたメイだったが、抱きしめられ声を上げて泣き出した。
「ごめん…メイ…メイがそんな気を遣ってくれたのに気づけなくて…何でも話してくれてると思ってたのに…話を逸らされたのが…なんか悲しくて…」
メイを泣かしてしまったことへの後悔…メイのことがわかっていなかった自分への怒り…様々なものが混ざり涙となって吉田の頬を濡らした…
※元投稿はこちら >>