「え…?どのくらいだろう…。10歳の時には来てたかも…?」
思い返してみても記憶が曖昧。幼い頃に売られ、人生の大半をソナで過ごしてきた。
学校はどうしたのか、どうしてここにいるのか、聞いていいのか分からない遠慮がちな質問を受ける。
「あ、学校は元々行ってませんでした。ママが行くなって…、私は行きたかったんだけど…。」
母はシングルマザーだった。
望まぬ妊娠によりメイを産んだ母は、子育てする能力がなかった。
洗濯や食事をまともに用意できず、小汚い不健康な姿の子供を公の場に出せず、学校に行かせていなかった。
「ここでママの借金を返してるんです!ママもきっとお金を稼いでくれていて、また一緒に暮らすのが夢なんですっ!お別れの時、私が中学生になる年までには迎えにきてくれるって約束してくれました!…ちょっと遅くなってるみたいですけど、待ってるんです…。」
多分、その母はもうメイを迎えに来ない。
深く事情を知らない吉田でも直感で分かったはず。
借金をチャラにする替わりに娘を差し出し、きっと他の男でも作ってるんだろう。
もはや真実を知る術はないが、顔も知らないその女に憤りを感じたはず。
「借金を終わったら、学校って行ってもいいのかなあ。もう18歳だけど…。あっ、それに吉田さんとお酒も飲みに行けちゃいますね!借金って後どのくらいあるんだろう、いつ終わるのかなあ…。」
ソファに座ったまま、足をプラプラと前後させて遊ぶ。
元来の明るい性格の他、歳の割に幼く見えるのは就学していなかったから。
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