-歯磨きをしてほしい。-
そんな話がこんな形に発展するとは思わなかった。
確かに少し強引に、話を振った。
自分で言うのもなんだが。少々露骨だったようにも思う。
しかし、その露骨さが功を奏したのか、あるいは陽の心のどこかにタイミングを伺ってた部分があったのか。
いずれにしても、電話やSNSのやり取りで突発的に出せる話題でもなく、
歯磨きを求める…、という一見、年甲斐もあって友達や親にすら言い出せないことを求めることができる相手。
陽にとっては目の前の男はやはり特別な存在なのかもしれない、そう思っているのかもしれないと男は考えた。
突然出た男性器の話、男にとっては突然でも、陽にとっては突然ではないのかもしれない。
話が続く限り、適度に相槌を打ちながらも余計な問い返し、話の腰を折るような同調なども一切せず、まずは耳を傾けた。
会話を合わせるように、知らないものを知っているかのように。
また、驚きを上手く誤魔化すようにそれとなく振る舞いながら、友達とのコミュニケーションを図っていることを知る。
「確かに…、そんな話…お父さんにはできないよね。
女の子なら尚更さ…。」
陽の言っていることは間違っていない。
感覚のずれもない、もはや年頃の女の子として最もまっとうに生きてきた結果を示すように。
当然、あるべき姿を見せてくれているとさえ思う。
-こんな生真面目な子に…。
こんな相談を俺は受けていいのかい…?
父親ではなく、赤の他人であるこの俺が…。-
純粋な思春期の戸惑い、興味、少しの勇気をこの男にだけ晒しているのだろう。
男は形容しがたい優越感を感じていた。
父親ではできない役割を…、あるいはするならまだ彼氏にだろう…、そう思えるような内容を打ち明け、晒す陽を堪能できている…優越感。
罪悪感や背徳感もある…、しかし。
-君にはできないだろう…?館花…。
君に…父親に…娘が、こんな可愛い娘が、ちんぽが気になるの…、なんてね…。-
真剣な表情を見せたくないかのように、冗談交じりで笑顔を見せながら話す陽。
そんな陽を見れば、勝ち誇ったような笑みを浮かべてしまう。
優越感…、優越感…、優越感。
心のどこかで、娘を、育ち盛りの娘を自慢されているような気持ちになっていた。
可愛いだろう?大人っぽくなっただろう…?発育の良い娘だろう…?
何とも思っていなかったはず、一緒に成長を喜べるくらいまっとうな男だったはず。
しかし、父親ではなく、自分を選び、打ち明けている目の前の陽を見れば…、反応するのは股間。
しかし、本題は男性器が気になる、事ではないらしい。
冗談ぽい笑みを浮かべた陽の表情、トーンが少し変わったように感じた。
そして切り出したのは明らかにフェラチオの話題。
男も何となく理解する。
ただただ信頼のおける男だから、性的な話題を切りだせたわけではないのだと。
口内を使って快感を得る行為…、そこから彼女は…、陽はフェラチオを連想した…ということを。
-何と答える…。
簡単に肯定するか…?
試してみるかい…?とかか…?
どう導けば…、事が大きくならず…、陽を楽しむことができる…。-
陽からの問いに、男は即答できなかった。
この状況…、陽から父親以上の存在価値を勝ち取るために…、どうすべきか。
正解などわからない、男は下手な嘘をつくのは愚策だと判断。
「あぁ、本当だよ。
先に言っておくけど、変なことじゃない。
陽ちゃんたちみたいな歳の子は、少しずつ興味を持っていくことだ。
だから、そんなにびっくりしないで、大丈夫だよ…?
でも、初めて聞いたら、驚くのは当然…、だって、陽ちゃんの言う通り。
アソコは…ちんぽは、おしっこをするためについているんだから。」
驚くほどの事ではないと言いつつも、陽の気持ちを全面的に肯定。
何もおかしなことではないと、さも当然のように言ってしまえば今までの陽の経験を否定しがちな返答になる。
知らなかったことが、そんなことで驚いてしまうのは恥ずかしい…とは思わせたくなかった。
「フェラチオって言ってね…。
女の人の口で…、男の人のちんぽを気持ちよくさせてあげる…射精…はわかるよね…?
主に舌と、唇、口の中全体を使って、ちんぽをマッサージしてあげるようなイメージさ。
わかるかい…?
舌の腹…裏側…、唇に表面、内側…、そして唾液…唾だね…?それをしっかりと絡めて、啜らず…泡立つくらいに混ぜながら、口の中で…、男のちんぽをマッサージだ…。
何かに似ていると思わないかい…?」
唾液が絡み、啜らず泡立つ…、口の中…マッサージ。
男はフェラチオをそのものをイメージさせる、性的な行為への誘導よりもむしろ、
歯磨きに近い…と思わせるような表現を用いた。
歯磨きなら目の前の男にも依頼できた。
ではそれに近い行為だと感じさせることができればどうだろう…。
-君にこんな話…できるかい…?
無理だろうね…?娘に向かって…ちんぽ…なんて、口が裂けても言えないだろうな…?
でも俺は言える…、俺と陽ちゃん…いや、陽との関係なら、言っても聞いてくれるんだ…。-
脳内ではまるで父親への勝利宣言か…、いや、まだ完全ではない。
しかし、考えれば考えるほど、如何に陽の父親を意識していたのかが感じられる。
「そして、これはちんぽを使って…女の子のお口を気持ち良くしてあげる行為でもあるんだよ。
大人になっていく中で、とっても大事なことだ…。」
止めを刺すように、ちんぽを使って口が気持ちいい、妄想で先に連想させながら、具体的な表現で締める。
高揚…惚けた表情を見せる陽の返答がどんなものか…。
-願わくば…君にも聞かせてやりたいよ…。-
その笑みは陽の奥にある、父親に向けられていた。
【ありがとうございます。
とても素敵な回ですね。
仰られた内容を少し込めてみました。
希望に添えればいいのですが。】
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