「ふぅ…。参ったねこりゃ…。」
久しく女性とのまともなやり取りもなかった。
それどころか陽のような年端のゆかぬ少女となればなおさら。
年甲斐もなく少しの緊張と興奮さえも感じながら、一旦のやり取りを終えた。
どう考えても陽の父への内緒を通してほしいのはこちらなわけだが、陽を配慮した風に言葉を紡げばどうやらうまく伝わったらしい。
夫婦関係についても、あからさまではないが事実を伝えた。
しかし、それでも軽蔑をするわけでもなくこちらへ来るというのだから、現時点で抵抗を感じているわけではないのだろう。
掘り下げてくれば、また話せばいいか。
しかし…、いったいどんなつもりで来るのだろうか…。
そんなことを考えているうちに時刻は昼過ぎ。
バタバタと最低限の業務だけを進め、昼食を取るためにエレベータに乗りこめば陽の父と出くわす。
まさかこのタイミングか…と考えれば、少し笑いそうにもなるが、嬉しそうに娘の話をするのを見ている限り、陽から男の話は聞いていないようだった。
親バカ…というところだろうか、娘の話題は尽きない父親。
そんな娘に手を出すとなれば、この父親も偉く面倒な立場を振る舞うのだろう。
話半分に父親の話に相槌を交わしていたが、どうやら娘の発育…性体験、恋愛経験などが少し気にはなっているらしい。
好きにさせてやればいいのに…、そんなことを思いながらも、こんな過保護の父親の知らぬところで、娘が成長していく様を楽しむのも悪くないか…。
と、その場を後にした。
指定した土曜日は数日後、あっという間である。
普段は予定もない週末だったが、今回は違う。
何があるわけでもなかったが、自然と仕事は捗り、周囲の目が違って見えるほど。
一度会話が終わったはずのスマホ、LINEの通知が来ないかとそわそわする自分もありながら、まもなくその週末を迎えようとしていた。
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