『確かに、いろいろな関係が当たり前のように存在する世の中にはなったよね。
結婚する気もないのに何年も同棲したり、恋人だと公言できない相手とセックスをしたり、
それに性に対して接点を持ち始める年齢も、一昔前より下がってきたような気がする。
今じゃ初体験が中学時代、なんて子もざらにいる。
ほんと、驚いちゃうね。』
陽の言葉を否定するでも肯定するでもなく、話題に対する一つの見解として返事をしていく。
貞操観念をしっかりと持っていること自体はとても良いことであり、何の問題もない。
しかしながら、つい先日久しぶりに再会した相手にする話か…といわれると疑問。
それだけに、陽にとって男の存在はあらゆる意味で特別なのかもしれない。
普段顔を合わせる友人達とは話題にできない。
当然、そんな話を父親とするわけもない。
じゃあ母親は?
父親に比べればしやすい話もあるかもしれないが、やはり異性と同性という観点で見るとまた別の話になりそうだ。
何かやましい感情をお持ち合わせているわけではなかったが、
妻との別居もあり、短くはない月日を、女、と関わることなく過ごしてきた男にとって、陽とのやり取りはシンプルに心を躍らせた。
それも、マッチングアプリや出会い系の類で知り合ったような、どこの誰ともわからないような女ではなく、友人の娘。
きっとこんな話を娘から聞くことはないのだろうな…などと、勝手に優越感を感じているのもその理由の一つになりそうだ。
どうなるものでもないと、最初は考えていたが、せっかく話してくれているのだ。
内にあるものをある程度引き出すことができれば、酒の肴にでもなるだろうと…その程度のちょっとした悪ふざけのような芽生え始めていた。
『別に陽ちゃんが変とか、普通、とかじゃないよ。
考え方なんて、人それぞれ。
言ってしまえば、お互いがいいならいいんじゃない?が結論になりそうな気がするね。
もちろん、中には誰かが悲しんだり、迷惑に思うこともあるかもしれないけど…。
当人同士が合意の上で、事に及んでいるなら、倫理観の問題だけってことになる。犯罪じゃないからね。
彼氏じゃない人とエッチをしても、不倫をしても。
なんか、不倫を推奨してる嫌な大人みたいに聞こえそうだな。
そう言う意味じゃないからね?
解消法を間違いたくないのはみんな同じだと思うよ?
でも、それに困って何もしないと、ずっとわからないままだと思うけどな…?
やってみて、間違ったなって思ったら、違うなって思ったら変える、止めるって選択を取る、でも俺は良いと思う。
犯罪以外ならね?(笑)
間違っても良い相手がいないなら、俺はいつでも協力するから何でも言ってごらん。
大丈夫、別に君のお父さんには何も言わない。
陽ちゃんはもう立派に大人の階段上ってんだ、いちいち親の機嫌を伺うこともないだろうからね。』
遠回しに陽の内にあるものを探る物言い。
火遊びに誘うような、そんなきっかけを与えるかのような。
それに乗ってこないならそれはそれで平和でいい。
これで何か変わるなら、平凡な日常に艶やかな色が差し込んできそう、ただそれだけのこと。
『離婚?
してないしてない。
別居中ってだけさ…、ちょっとぶつかることが増えてね。
ほんと、陽ちゃんにこんなこと言うのもあれだけど、不一致な部分があってね。
求めすぎたのが、嫁さんがつかれちゃったみたいなんだよね。
ちょっと距離を置こうかってなっただけさ。
じゃなきゃこんなメッセージの交換も簡単にはできないって。』
直接的な表現は避けた。
年頃の少女が相手だ、当然の事。
ただ、勘が良ければ性の不一致。
ある意味、別居の理由は陽の貞操観念と逆側。
そんな状況の男を陽は理解するのか…、否定するのか。
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