ーーーーーーーーーーあばらや--------
「ほぉこの隠匿魔法、サマエルに見破られてしまったか…サマエルも腕を上げたな…これも、舞台装置の一つ。まぁ人間には分からんだろうから問題はないがな(笑)」
リルベルに向き直り
「そろそろ行くとしようか。いくら何でも遅れるわけにはいかんからな。」
そう言うと、リルベルの腕を取るヨハンセン。
何事か呪文を唱えると、次の瞬間リルベルとヨハンセンの姿は、そこから掻き消えていた。
「お兄様、行ってしまわれたわ。今日一日養生していれば夜には魔法も使えるようになるだろうって、お兄様は仰ってたけど…」
そう呟くとリルベルが用意した回復水を口に運ぶジギタリス。
ーーーーーーーーーー王宮、舞踏会会場--------
衛兵が扉を閉めようとする寸前に、リルベルの腕を取り忽然と姿を現すヨハンセン。
ヨハンセンの姿を確認した顔見知りの衛兵が、
「これはヨハンセン殿、国王様・前王様・フアナ王女以外は、皆様もう中においででございますよ。」
そう声をかけた衛兵は、無礼に映らぬよう一瞬リルベルの左手に視線を投げて、
「ヨハンセン殿、お美しい奥様をお連れですね。これほど美しいなら、いつもご自慢していたのも分かります(笑)」
リルベルの視線に気が付き、
「これはご無礼をいたしました。ヨハンセン殿、奥様、お荷物があればお預かりしておきますが。」
「いや大丈夫です。ありがとう。」
そう衛兵に言うと、扉をくぐるリルベルとヨハンセン。
リルベルとヨハンセンが舞踏会の会場に足を踏み入れると、二人の後ろで、ガシャンと音を立てて扉が閉まる。
ざわめきに包まれている舞踏会会場。
会場内を見渡すと、一段高くなったステージの近くに、クレアとフレデリックの姿を見つける。
リルベルとヨハンセンは、他の出席者と挨拶を交わし談笑を始める。
その近くにいる人たちは皆、リルベルの指輪に気が付き、ヨハンセンに羨望のまなざしを向ける。
「おい見たか、ヨハンセン殿の連れている女性、綺麗だな。同じ色の石が付いた指輪とイヤーカフスか。羨ましいよな。」
等々、囁き合う噂話が二人の耳にも届いている。
その時ファンファーレが鳴り、続いて、
「ご出席の皆様、国王様・前国王様・フアナ女王様がお着きになられました。」
との声が会場内に響き、ざわめきが止み、ファンファーレが最高潮を迎える。
ーーーーーーーーーー前王控えの間--------
「今の話……やはり勇者メルヒルの噂は本当だったのですね。」
と記者。
「貴様……」
剣を振りかざす□□。
「ちょ…ちょっとまって……ただの記者、新聞記者ですって。何も害を成すようなものは、一つも持ってませんよ。」
□□に対して両手を上げる記者。
「なぜここにいる。記者証を見せろ。」
□□に記者証を提示しながら
「いやトイレの帰りに、折角なんでと思って隣の部屋の中を見てたら、話し声が聞こえるじゃないですか……記者魂が疼いてしまって気が付いたら間の扉を開けてたと…」
「どこから話を聞いてた。」
「○○○可愛い、綺麗だ。ってところから。」
と記者が言うと、赤くなる孫娘と幼馴染
ーーーーーーーーーーサキュバスとインキュバスの町--------
映像魔石を持った記者が、下山していくと
「一部始終しっかりと記録しといてくれよ、ルチア。もしあの記者が間に合えば、面白いことになるからな。」
そう言い、勇者と魔王の戦いに視線を戻すハイル。
「おいおい、押されっぱなしじゃないか勇者。リルベル様にはああ言われたけど、ここで、手助けしないと勇者やられちゃうよな。」
〘ヨハンセン様・リルベル様。今映像魔石を持った記者が〇〇山からそちらに向かっております。このままではライブ放送間に合いそうにないので、途中で記者を拾っていただけないでしょうか、お願いいたします。〙
ーーーーーーーーーー王宮、舞踏会会場--------
〘ハイル、ご苦労。分かった記者を拾って、こちらに連れ込めばいいのだな。〙
「リルベル聞いたように、記者がこちらに向かってる。ちょっと迎えに行ってくるから…リルベルお主と私の間柄は、大半の出席者に見せたはず。ここから少し騎士がお前に話しかけやすいように、私は席を外すから。」
リルベルが気になっていたフレデリックは、ヨハンセンがリルベルの傍を離れて、リルベルが一人になったのを目敏く見つける。
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