−−−あばら家−−−
小さな悲鳴が聞こえ何かを叩く音が聞こえるとヨハンセンに手を引かれサマエルとジギタリスの元へ。
二人の姿を見、何が起こったか瞬時に理解すると顔を手で覆い二人を見ない様に努めていると直ぐに服を着、兄妹の話を聞きながらヨハンセンが用意した食事、回復を助ける為にリルベルは水差しに指を向け回すと回復水を作ると隣の部屋で着替え始める。
「えぇ、残酷な復讐よ、クレアのエスコートがフレデリックから婚約者にエスコートが代わった時、刻止まり魔法でウェイスト、クレアに人間だった時の私の拷問から処刑までの出来事を見せてあげようと思うの。
勿論、王族、勇者、魔法使いクレアの父母弟が全て知っていたと言う事も…、フレデリックより騎士道精神を持つウェイストと淑女の鑑と言われるクレアがどの様な反応を示すか愉しみでもあるわ。
私の予想ではウェイストは騎士道精神でただただ忠誠心だけで王族に仕えていた事を悔やむでしょう、クレアは全員の事を軽蔑するでしょう、積極的には味方になってくれないでしょうけど邪魔はしないで居てくれると思うの。
……魔族になってから気づいたのだけどウェイストって王族の血を継いでるのね、王国復興に使えるわね。」
何十代か前にウェイストの家に降嫁した王女が居た。
「貴方にエスコートされている私に許可なく話し掛けてくるのは人間界では不敬なのよ、貴族社会では下の者から声掛けは厳禁。
前王、現王にも注意を受けると思うの、まぁ、現王は人前だから注意でしょうけど…(クスクス)それって騎士としてもだけれども貴族としても侮辱されたと怒りを露わにしを醜態を晒すのよ、プライド高いフレデリックはその怒りを私に向けてくるはずよ。
その後は…、ねっ、愉しくなりそうでしょう?」
話しながら手でヨハンセンに屈む様ににイヤーカフスを着けると「永遠に…。」外れない様、魔法を掛ける。
「ヨハンセン、そろそろ時間ね。」
食事を終えたサマエルとジギタリスがやって来る。
「姉上、そのドレス、黒がよく映えます、何層かのレースの下に紫の生地に縫い付けられているパールがまるで星の様に見えます。
身体が動く度に色が濃くなったり薄くなったりするドレスですよね?」
「えぇ、ヨハンセンが贈ってくれたのよ。」
「お姉様のイヤリングとネックレス、指輪の色、お兄様の瞳の色なのですね。」
「えぇ、愛の証として……。」
「お兄様のイヤーカフス、お兄様の瞳の色とお姉様と瞳の色の宝石なのね、素敵だわ……。」
「兄上、姉上の指輪…。」
「特殊な隠匿魔法が掛けられていますよね?」
「騎士、フレデリックがどんな愚行に出るか…、出なければまた違う方法を考えますが…。」
「兄上も姉上も中々…、怖ろしいです。」
「エル、人々に知らしめる為ですよね?」
頷くリルベルとその横で微笑むヨハンセン。
−−−孫娘と幼馴染が居る前王控えの間−−−
ノックと共に侍女数名が手に何かを持って入ってくる。
「失礼致します、ヨハンセン様に申し使って持って参りました。」
「こちらでご用意致しますのでご心配はいりません、さぁ、お嬢様はあちらの部屋へ、お坊ちゃまはこちらの部屋で…。」
「お嬢様?!えっ?あの……。」
「お坊ちゃま?!」
幼馴染は直ぐに着替え終わり部屋の中を落ち着かずウロウロしていると数十分後、すぐ横では孫娘の用意がされ、二人の姿は男爵の令息と令嬢となる。
「○○○?別人だ…、可愛い、綺麗だ。」
「○○だって格好いいわよ。」
扉がノックされると警護兵が入ってくると侍女が下がる。
「○○○と◯◯、キールさんの酒場で話していた出来事は本当なのか?」
「……□□兄?何でそれを?」
「王都の兵士になっていたんだね、……魔の子村は自称勇者が壊滅状態にした。」
「□□兄、まだ詳しくは言えないけどある方が◯◯と私の命を救ってくれたの、□□兄の家族は無事よ。」
「しかしお前らがどうして王宮の舞踏会に?俺はお前らを警護しろと前王に言われここに来た。」
「魔の子村の者がキールさんの酒場に居ると聞き行ったんだ、勇者の話はその時聞い、今日は兎に角、お前らを警護しなければならないらしい。」
カタッ……!
「何者!」
剣を抜き衝立を退かすとそこには記者が立っている。
−−−サキュバスとインキュバスの町−−−
ハイルとベル、ルチアの三人にテレパシーが…。
〘これから自称勇者は現魔王と戦うのね、ハイルとベル、そしてルチアが魔法で手を貸すのよね?
提案なのだけど自称勇者は自分に自信があると思うの、そのプライドをズタズタにしてやりたいの。
なので暫くは現魔王の攻撃をそのままにして?自称勇者がある程度、そうね、中程度の怪我を負って
装備品もボロボロになった頃、僅差で勝たせてあげて欲しいのよ。〙
〘リルベル様、私達もある程度、傷を負った方が宜しいのでしょうか?〙
〘いいえ、少し装備に綻びがあるくらいでいいわ。〙
〘リルベル様、畏まりました。〙
「愚かな人間よ、掛かって参れ!」
「魔王!!」先手必勝とばかりに剣を構え間合いを詰め現魔王へ攻撃を仕掛ける。
ガキン………ドサッ!いとも簡単にふっ飛ばされる自称勇者。
「あれは…、勇者と魔王、なぜ戦っている?人間国と魔国は友好関係を結んでいるはずでは?
まさか、魔国の地下資源目当てで現王様が勇者に命じた?まさかしかし目の前では勇者と魔王が……。
そんな事をすれば戦争になってしまうじゃないな!今すぐ知らせに行かねば…、しかし、スクープも…、それどころではない!前王様にお知らせしなければ…。」
「そこの方お待ち下さい。」
「ルチアさん!待てません、今すぐ知らせねばならないのです。」
「こちらをお持ち下さい、ある方にお預かりした映像魔石です。」
「映像魔石?」
「この魔石単体でカメラ、マイクをリアルタイムに流せるものです、勿論、録画も出来ます、片方は私が持ってます。」
「ルチアさん、いいのですか?」
ハイル、ベルの三人で頷くと映像魔石を持ちころげる様に下山していく記者。
−−−現王と次官達とフアナ−−−
「おぉ、フアナ、体調はどうだ?」
「お兄様、いいえ、国王様、大分育ってきております。」
「……フアナ、腹の子はメルヒルの子だよな?」
「アハハハ、そんな事を聞くなど可笑しいわ、多分、メルヒル様の子よ。」
「姫様、多分では……。」
「大丈夫よ、産まれてくる子は私の赤子、王家の印である瞳の色は間違いないし、メルヒル様の髪色と同じ男としか……。」
「フアナ、もう何も言うな!お前が産む子はメルヒルとお前の子、皆の者も解ったな?」
−−−舞踏会会場−−−
招待客達が会場に入場してき談笑をしている頃、入り口にフレデリックにエスコートされたクレアの姿が…。
「クレア、今日は迎えに行けず申し訳ない。」
「いいえ、急ぎの用があったと聞いています。」
ギロッとウェイストがフレデリックを睨む。
「フレデリック殿、クレアのエスコート、この先任せて頂く!」
「ウェイスト様、何か有ったのでしょうか?」
「クレア、こちらへ。(挨拶をしながら隅へと。)…クレア、こんな日に済まないが家を出る、家を捨てる覚悟があるか?」
「仰っている意味が分かりません…。」
「本日、メルヒル様が魔の子山の祠から魔国へ侵入した。」
「………!!」目を大きく見開き驚くクレア。
「何も言うな、俺はクレアを守りたい、父上も母上も他の家族もクレアだけならと言ってくれている。」
「それはお父様、お母様、フレデリックも知り関係しているんですか?」
「まだ判らないが…、噂が出回っている、確証がなくクレアに話せなく済まない。」
「解りました、私は幼い頃から貴方様だけをウェイスト様だけを見ていました、そんな貴方が言うのです、信じない訳がありません。」
「クレア、君だけは守るから必ず守る、俺の命が無くなろうとも。」
「それは嫌です、二人で末永く暮らしたいです。」
「俺は騎士として最低な事をする可能性がある、王族を裏切るかもしれない。」
「処分されるなら正しい事をして一緒に処分されましょう。」
怒りと虚しさに満ちているウェイストに春の太陽の様な笑みを見せるクレア。
ファンファーレが鳴る直前、出入り口の大きな扉の前に転移魔法で現れるヨハンセンとリルベル。
※元投稿はこちら >>