「ヨハンセン、指輪嵌めてくれるの?指輪貰うの初めてだわ……、この指輪の意味は?」
勇者と想いを確かめた時も正聖女だから華美な物は贈れないからと色々、言い訳され貰ったことが無かった指輪。
今ならあの時貰わなくて良かったと思える、新たな肉体を入手(くれた)し復讐まで手を貸してくれるヨハンセン。
復讐心で一杯の私は気づかなかった、ヨハンセンが復活させたのは手慰みと言っていたが…。
「聞いてもいいかしら?いいえ、聞かせて頂戴、思い出せないけれど私、前世で貴方と出会っているわよね?
貴方は最初から私と気付いていたの?そうでないと復讐を手伝ってくれるのかが分からないのよ。
魔族のただの気まぐれでここまでの事をしてくれるだなんて…。
それに貴方なら態々、人型だ人間界に来なくても見聞は出来たはずだもの、私を探しに来てくれたの?」
ヨハンセンの前に立ち見上げ考えが間違っていないかを尋ねる。
「えぇ、クレアに回想を見せた時の結果を勿論、お知らせするわ。
貴族の中で彼女とそのご友人たちは平民が正聖女になっても何も言わず拍手とお祝いを言ってくれたの。
クレアと友人ではなかったけれど変な邪魔はしてこなかったわ、表立っての拘りは持たなかったけれど
二人で休憩した時はお茶を淹れてくれたわ。」
「姦淫の罪は婚姻者であれば同意不同意に関わらず何年か前までは鞭打ちの上、死罪だったわ。
今は鞭打ちの上、両手の甲にバツ印が刻印されて下半身の機能を無くす、外科手術ねら、陰嚢も陰茎も切り落としてしまう。だったかしら…。
未遂の場合も被害者の格で同じ様にされるわ、格下の者への未遂なら陰嚢のみ切り落とされる。
けれど貴方の相手、私にその様な行為に及んだら死罪になっても不思議ではないけれど…。
私、騎士、フレデリックは簡単に死罪にして欲しくないの、御家断絶、伯位剥奪、平民になってもらって仕事もほぼない状態で
フレデリックが馬鹿にしていた平民に罵詈雑言、石を投げられ惨めにボロボロになってから全て私が仕組んだ事だと理解してから死んで欲しいの…。
私、残忍かしら?」
−−−パーティー一行−−−
温泉の脱衣場、ルチアはベルに謝罪する。
「ベル様、お助け出来ず申し訳ありません、勇者様が怖くて身が竦んでしまい動く事が出来なかったのです。」
「ルチア様、宜しいんですよ。」
「そう言って…。」
「いいえ、ルチア様は修道女なのにご自分の身だけが大切、そしてハイル様がお好きで私を触らせたくなかった、そうでしょ?」
「いえ、私は……、本当に勇者様が怖くて…、それに私、ハイル様にその様な想いは……。」
「言い訳なんていいです、必要以上に話しかけてこないでください!」
着替え終わるとベルは温泉場を後にし食堂の前に。
「ハイルじゃない、勇者より先に来てよかったの?」
「オートマタ、随分とルチアを苛めてきたな。(笑)」
「ルチアにはあれくらいしないと勇者と話せないでしょう。」
「そうだな、食堂では俺はルチアと」
「私は勇者と」
ニヤリと顔を見合わせ笑っていると勇者に腰を抱かれたルチアが食堂前に。
「勇者様、どうやら二人掛けのテーブル席が二席しか空いていないようで。」
「勇者様、私と食べませんか?お酒も頂きたいですしルチア様はお酒お飲みになれないじゃないですか?」
「そうだな、たまには酒もいい、ルチアには悪いがベル、席を共にしよう、ハイルもそれで構わないな?」
「はい、大丈夫です。」
「はい。(ハイル様とで良かったですがベル様の先ほどのお怒り最もなんですよね…、宿に戻ったら謝罪しましょう。)」
食堂に入ると会話の届かない距離の二手に分かれハイルとルチア、ベルと勇者と席に座る。
「旅の方々、いらっしゃいませ、本日のおすすめは山牛のロッキー・マウンテン・オイスターの炒め物と干し野菜と干し茸と大麦のスープです。
お飲み物はどうしますか?癖はありますが大麦酒がこの村では飲まれています。」
おすすめを注文するとハイルが支払いはこちらにと店員に言う。
勇者とベルは大麦酒を次々に開けていき……。
「ロッキー・マウンテン・オイスターとスープです、温かいうちに食べて下さい。」
勇者とベルの席にも運ばれている。
「勇者様〜、きゃはは、これ牛の睾丸ですね〜、滋養のために山ではよく食べられてるらしいですがここまで大きいのはじめて見ました。」
何と言っても魔牛の睾丸、刻んでもなく丸ごとそのままにナイフとフォークで食べろとばかりに皿の上に置かれている。
「ハ、ハイル様、これはどの様に食せば宜しいのでしょう?やはりナイフとフォークで?」
「見慣れない食べ物であると思いますが滋養がある食べ物です、山岳ではよく出ます、無理にでも食べて下さい。」
「お姉さん、美味しいよ?それともやっぱりこんな貧しい村の食べ物食べたくない?」
「そんな事はありません、有難く食べさせて頂きます。」
「スープも飲んでね、干し野菜と干し茸だけど茸の味がたっぷり染み出してるから!
そっちのお兄さんとお姉さんもお酒ばかりじゃなくお肉も食べてよね!」
勇者もルチアも子どもに言われるまま魔牛の睾丸とマジックマッシュルーム入りのスープを飲み食いする。
「(何だ!牛を食べたら先ほどベルにしてもらったのにムラムラする!おー、ベルの服が透けている様に見えてきたぞ。酔っ払ってきたのか?)」
「(どうしたのかしら?下半身がムズムズします、何だか水音まで……、ハイル様の腕に包まれたいです。)」
「ルチア殿、どうか致しましたか?」
「いえ……、ハイル様…。」
「勇者様が酔われている様です、会計を済ませ部屋に戻りましょう。」
「ベル、あの…、また…、アレをしてほしいのだが…。」
「アレですか?アレって何ですか?」
「ベル!」
音を立て席を立つとハイルが勇者に肩を貸し部屋へと戻っていく。
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