〘匂い袋か…あんなもの嗅がせたら、ただでさえ獣の勇者が、それしか考えられなくなり、やり死にするかもしれんが、それもまた一興か…
馬については魔国産のものに変えている故、発情する心配はないが、御者に影響されては困るな。
今回の御者はいつもの者と違い、若く新婚とのこと。ハイル、匂い袋を取り出すのは、パーティ一行が出発してからにしてくれ。それでいいかな?麗しの君よ。
あの匂いは好意を抱き始めた異性のことは、一層魅力的に感じて、何をおいても自分のものにしたいと、思うのであったな。。
修道女ルチアからハイルへ好意の目が向けられ、それに勇者が気が付いた時の表情も楽しそうだ。
ハイル、もう着く故、お前とのテレパシー通信はここまで。
麗しの君よ、パーティ壊滅は、ハイルとオートマタに任せて、われらはこちらで仕上げの準備をしようぞ。。〙
馬車が止まり、御者が馬車の扉を開けると、一行が降りて協会に入っていく。
ーーーーーーーーーー教会---------
旅支度を整え終え、再び部屋に入って来たルチア。
「ルチア殿、今までこういった旅のご経験は?」
「ハイル様、何分にも初めてのことゆえ、他の皆様のお邪魔にならないか心配で…それに私は戦うこともできませぬ。それに…」
「そんな心配なぞ要りません、私ハイルがルチア殿をお守りいたします。ルチア殿は治癒魔法を使える存在。パーティには必要不可欠です。それに何です?他に心配事でも…」
「い…いえなんでも…(館長様の前では流石に言えない…でも旅立ちの後すぐにでも、ハイル様には話しておこうかしら…)」
その時、扉がノックされ直ぐに開くと、四人が中に入って来る。
「これは王女様に勇者様。ヨハンセン殿にそちらは?」
ベル(オートマタ)を見て、ヨハンセンに問いかける館長。
「ああ、こちらは魔法使いのベル殿。攻撃魔法とサポート魔法を使えて今回のパーティに同行される。」
「そうですか、宜しくお願いします。こちらが同行するルチアになります。それに向こうが剣士のハイル殿。」
「ハイルと言います。宜しくお願いします、勇者メルヒル殿にベル殿でしたか?」
一瞬のうちにベルに目配せするハイル。
「ベル様宜しくお願いします、ルチアと言います。(勇者好みの肉感の方だわ……この方も勇者の餌食に…)」
挨拶をしていると、メルヒルの好色の目が嘗め回すように見てくるのを感じる。
そう思うと無意識のうちに、ハイルに身を寄せるルチア。その様子を見逃さないメルヒル。
「剣士ハイル殿か、はじめてお目にかかる。今回パーティのリーダーを務めさせていただくメルヒルと申す。」
ハイルに対してマウントを取るメルヒル。
〘麗しの君、見てるか。勇者がメルヒルに対してマウントを取ってるぞ。
ルチアがハイルに身を寄せたことにご立腹らしい(笑)〙
<ハイルと言います。勇者メルヒル様のご噂は、以前から伺っております。
以前の遠征では、敵将の首を取ったとか、その他の武勲のことも諸々と。
今回は青百合と青石を取って来るミッションで、強敵も出ないだろうからと、鍛錬を積んで来いということで、未熟ではありますが私に白羽の矢が立ちました。
色々と勉強させてください。宜しくお願いします。>
そう言ってメルヒルに対して頭を下げるハイル。
ハイルの言葉を聞き態度を見て、満足そうに笑みを浮かべるメルヒル。
<それではメンバーもそろったことだし早速出立しようか。〇〇山と言えば少し距離がある。明るいうちに少しでも進んでおきたいからな。>
そのメルヒルの言葉でメンバーが立ち上がるが、館長が出立のお祈りをささげてくれるとのことで、メンバーが旅立ったのは、それから半刻後の事だった。
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