〘おいおい、麗しの君。勇者メルヒルに何をした。館長との話も上の空で、自分の股間を弄ってるぞ(笑)後ろに立ってるから、丸見えで笑いこらえるのに苦労するわ。〙
「勇者殿、先程からそわそわしてどうかされましたか?」
館長から見てもメルヒルの態度がおかしく映ったのであろう、館長がメルヒルに声をかける。
「これは失礼しました館長殿。国王様の命を少し考えておりまして…〇〇山へ行って青百合と青い石を取ってこいとの命。行くのことに関しては全く問題は無いのですが、何分にも地理に不案内でして…国王様が仰るには、修道院に行けば〇〇山への道案内ができる者もいるだろうとのこと。誰かご紹介いただけますか?」
そう、何とかごまかすメルヒル。
「成程その話ですか。国王様からの知らせが来ており承知しております。」
館長は、フアナ王女の後ろに、ヨハンセンと並んで立っている修道女ルチアに視線を投げる。
「(ま、まさか私…いやぁ、勇者とは名ばかりの野獣のような男と一緒の旅など……)私ですか?分かりました館長様。(ま、また口から勝手に、考えてもいない言葉が…)」
「メルヒル殿、後ろに控えているルチアでいかがですか。お聞きの通り本人も了承しております。地理のも詳しく、回復呪文も使えますゆえ、重宝かと。」
先程の倉庫での行為を思い出し、一瞬好色そうな色を浮かべた目をルチアに向けるメルヒル。
「ルチア殿宜しくお願いします。」
「分かりました。メルヒル様の旅にご一緒出来て光栄です。(いやぁ、いやったらいやぁ……一緒に旅などしたら、勇者は又あのような行為を強要して…)」
「そうだ勇者殿。〇〇山に赴くのであれば、魔法を使えるものも同行された方が宜しいかと。魔法使いについては、町はずれにある酒場にいる占い師が、詳しいと思います。ルチアは先程、その当てを聞きに行って、危ない目に…」
「あぁ、あの酒場ですか。それでは早速…ルチア殿ちょっと行ってきますゆえ、その間に旅支度を整えて下さい。では、館長殿後程ルチア殿を迎えに来ます。」
立ち上がったメルヒルに王女フアナ(リリス)が声をかける。
「メルヒル様、馬車で先程の酒場まで、お送りします。いいですねヨハンセン。」
「もちろんでございます。フアナ王女様。早速行きましょうかメルヒル殿。では失礼します館長殿。」
「(あれは、魔国も王国も先代の王だったころだから10年位前か…いやもっと経つかな。あの頃は両国の仲も良好で、行き来も盛んだったが)」
馬車に乗り御者に行き先を伝えると、頭の中で回想を始めるヨハンセン。馬車はゆっくりと進み始める。
ーーーーーーーーーーヨハンセン回想----------
「父上(先代魔王)、人間国への使者私めに。人間というものこの目で見とうございます。姿かたちはそれほど変わらないと聞きますが……」
「ヨハンセン、お前も物好きだな。魔力の一つも使えない者たちみたいだぞ…まあいい行って勉強してくるがいい。」
人間国国王の執務室で国王に拝謁するヨハンセン。
「国王様、この度はお目にかかり恐悦至極に存じます。私、魔王〇〇の名代ヨハンセンと申します。」
「遠いところよく参られたヨハンセン殿。ゆっくりとしていってくれたまえ。」
ーーーーーしばしの談笑-----
「そうかそうか…気に入ったぞヨハンセン殿。しばらくの間我のそばにいて色々と話を聞かせてくれぬか。」
「私ももっと色々と見て回りたいと思っていたところでした。今魔王〇〇とテレパシーで連絡を取り、了承を取り付けます。」
テレパシーで魔王と話し、もう少しの間人間国にいることの了承を取り付けるヨハンセン。
「魔王〇〇の了承は貰いました。」
「テレパシーというのは便利なものじゃな。私どもにも使えるようになるものなのか?」
「さあ、私には何とも…」
「そうか…残念だが仕方ないな。寝所を用意させるので、それまでゆっくりと…」
「そうですか、それではちょっと街を見てこようかと。」
「案内を付けましょうか?」
「いや気ままに歩きます…それに我々は一度訪れた場所には、二度目からは簡単に行き来できますので。」
街へ出たヨハンセン、しばらく歩くと人だかりのする広場らしき場所にたどり着く。周りの人間の話を聞くと、これから処刑が行われるらしい。
「なんでもフアナ王女様の許婚である、勇者メルヒル様に色目を使った正聖女みたいだぞ。」
「正聖女が男に色目使わんだろ。」
「だからこれは偽物だって話になったらしい。あそこに並んでるのは正聖女の近しい親しかった者たちの首らしいぞ。」
「おぉ、怖い怖い…そこまでやるかね。」
そんなやり取りが聴衆から聞こえてくる。
暫くするとボサボサの髪、土気色の肌をした女が一人転がされるように引き連れられてくると、処刑台の上で聴衆に見せつけるように何度か鞭うたれ、斬首台に固定される。
「あの女みたいだな。ここからも分かるくらいに傷ついて…よほどひどく拷問されてたみたいだ……可哀そうに。。」
「おい、そんなこと口にして誰かに聞かれでもしたら。現国王様はまだしも、皇太子はやりたい放題の暴君だぞ。」
「あぁ、そうだったな……くわばらくわばら。おい始まるみたいだぞ、執行人が斧を…ウッ……」
斧が振り下ろされた刹那、飛び散る〇しぶき・胴体から離れる頭。
一瞬の静寂の後、広場を埋め尽くす悲鳴すすり泣き及び嘔吐き。
地面に飛んだ頭は、今まで並べられていた頭たちの横に置かれ、胴体は処刑台から外されてそこに放置され、執行人たちは後処理の為かその場を離れ、見物人たちも散っていく。
一人広場に残されるヨハンセン。
「なんという残酷さ、今の国王様のうちは大丈夫であろうが、代替わりしたときは、魔国に攻めてくるのではないか?それにしても不憫な女だ。どうせ時間はあることだし、手慰みに復活させてやるか(笑)あとあと何かに使えるかも知れんしな。」
首と胴体を〇〇山の祠近くのあばら家に瞬間移動させ、自身もそこにテレポートを。
取り敢えず手早く黒魔術を使い首と胴体を繋げるヨハンセン。
「顔の造作も変えないとな……これでいいか…後はこの女次第。恨みや誰かへの復讐心、この世への未練等が強ければ復活するであろうし、そうでなければ朽ち果てるのみ。」
傷を治す魔法を全身に施すと、土気色ではあるが元気な時には綺麗だったであろう肌に。
「全身に包帯を巻いて…これで良しと。後は時々見に来ることにしようか。……そろそろ王宮に戻らないと。。それに人間国の防御体制や武力も調べといたほうが良さそうだな。最初は物見雄山のつもりだったが、とんだ変わりようだ。」
魔王にテレパシーで事の次第を伝えた後、王宮へテレポートして戻るヨハンセン。
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